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使い分けている? 物語における「主人公」と「主役」の違い

小説におけるテーマとメッセージの違いを明確化しよう
作品のタイトルに作中の登場人物の名前を冠した作品が多々あります。
とくに昭和以降に生まれた漫画作品に多く、中にはアニメ化もされて、皆様も見たことがある作品があるのではないでしょうか。

ところでそれらの作品の主人公は誰ですか?
と質問されたとき、皆様はどう答えるでしょうか。
おそらく明確に一人を挙げることが難しいかと思います。

きっとこれらの作品を読んだ読者の中には、作品のタイトルと作中で活躍する中心人物がずれていると疑問に思った方もいることでしょう。

その疑問を解消するのが、物語における「主人公」と「主役」という概念です。
本日は主人公と主役の違いについてご紹介します。

主人公とは視点中心人物


上記に挙げた例は小説でも言うことができます。
作中における視点中心人物と、実際に事件やトラブルを解決するために主だった活躍をする人物が違う物語を皆様も読んだことがあるのではないでしょうか。

これらの場合、主人公は視点の位置によって決められます。
小説や漫画といった物語では、主人公とは視点中心人物を指すことが多いのです。
視点中心人物は読者の感情移入の対象でもあります。

視点中心人物は作中における「語り手」にもなり、読者は視点中心人物をとおして物語を追い、作品のテーマやメッセージ、ヒロイン、そして「主役」を見ることになるのです。

アーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズシリーズ」や夏目漱石先生の「こころ」にも、これらの手法は見ることができます。

主役とは物語の中心人物


「シャーロックホームズ・シリーズ」の「探偵ホームズ」や、「こころ」における「先生」は物語の中心や根幹と深い係わりのある人物です。
また、それらの人物を女性にしてヒロインの役割も与える手法もあります。

根幹となる人物を事件解決を担うヒーローであったり、作品の題材やメッセージの体現者であり、あるいはヒロインとして扱われる彼らは、まぎれもない「物語の中心人物」です。そのため読者の中で、主人公の候補として挙がるのです。

作中における露出度の高さからも、彼らの物語内における重要性は伺えます。
そこで創作論的な見方をしたとき、彼らを「主役」と位置づける考え方があるのです。

主人公の概念は1つではない

小説におけるテーマとメッセージの違いを明確化しよう

今回ご紹介した主人公の概念は、あくまで創作論の1つです。
上で定義した「主役」こそが、やはり「主人公」だと考えていらっしゃる作家もおります。

またこれらのほかにも、主人公を「一人称における主体」「物語上の最大の問題の解決に最も貢献した者」「物語の固有の個性を象徴する者」「主題を実行する者」と捉える考え方もあります。

そもそも「主人公」と「主役」を分けずに同一人物に担わせている作品も少なくありません。

主人公の扱いや考え方は、作品の個性や味を強調する上で重要な要素であり、作者それぞれが自分の作風にや書ききりたいテーマに合った扱い方を考えねばならないものなのです。

皆様もぜひこのページを参考に、皆様にあった「主人公」の考え方を確立して原稿執筆に当たってください。


【原稿募集】はこちらから
www.choeisha.com/pub/