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古代ギリシア・ローマこそ理想。古典主義3大作家とは?

古代ギリシア・ローマこそ理想。古典主義3大作家とは?

ギリシア神話やローマ神話などの宗教や、パンテオンや凱旋門などの建築文化など古代ギリシアやローマ時代の文化に興味を持つ方が多くいますね。

17世紀頃のヨーロッパでも、その古典古代(古代ギリシアとローマ時代の文化)を理想とする古典主義が流行していました。

当時は古代を題材にした演劇が盛んに行われていたのですが、中でもコルネイユ、ラシーヌ、モリエールは古典劇の3大作家と呼ばれその名を博しています。
ここではその古典主義3大作家について紹介致します。

ピエール・コルネイユ(1606年6月6日~1684年10月1日)

ノルマンディーのルーアンに生まれ、喜劇『メリット』(1629)が評価されて劇作家としてデビューしたのち、悲劇を発表することでさらに注目され文学史に名を残しました。
作品を作っていく中でコルネイユはひとつの論争を起こします。
それは4大悲劇の中のひとつである、悲劇『ル・シッド』(1637)が古典の法則に則っていないということでした。

古典劇の基本には「時の単一(1日の間)」「場の単一(1つの場所)」「筋の単一(1つの主題)」という三一致の法則があり、これが守られていないまま成功を収めたことが「ル・シッド論争」と呼ばれるほど大きな問題になったのです。一説にはこの論争は成功を妬んだものが非難をおこしたとも言われています。

ジャン・バティスト・ラシーヌ(1639年12月21日~1699年4月21日)

シャンパーニュ地方に生まれ、修道院の付属学校でカトリック教育を受けます。
この教育により得た古典文学などの知識が作品に影響を与えています。

ラシーヌの悲劇作品はギリシア神話や古代ローマの史実を題材としており、三一致の法則を厳密に守ると同時に、日本語でいう七五調のようにリズムを重んじ、華麗な韻文であることでも有名です。

一般に「規則を意識すると作品は単調になりがち」というイメージがありますが、ラシーヌの場合、考え方や作品の個性が三一致の法則と相性が良く、規則を最大限に活かす能力があったと言われています。

モリエール(1622年1月15日~1673年2月17 日)

モリエールは先に紹介した2人とは違い、作家活動すると同時に俳優と座長をこなす器用な人物です。
人間の弱さを描いた風刺作品を多く制作し、フランス古典喜劇を完成させたと言われています。

演劇だけでなく交渉や営業の才能に優れたモリエールは、王弟殿下専属劇団という肩書きを手にすると、やがてルイ14世にも気に入られ王室所有の劇場の使用を許されるほどの成功を収めました。

人間観察による風俗描写と心理展開を得意とし、典型的人物を描いた性格喜劇を多く制作しています。
代表作には『タルチュフ』『ドン・ジュアン』『人間嫌い』などがあり、ルイ14世の前では『エリード姫』『はた迷惑な人たち』などの喜劇を演じたと記録されています。
最期は舞台の公演中に病死したことでも知られ、実に波乱万丈な人生を送りました。

典型的人物を描くことが得意なモリエールは、どの作品も落語のような面白さを含んでおり、今の私達にも楽しめる作品ばかりです。
モリエールが気になった方は、分かりやすく訳された以下の本がおすすめです。
古代ギリシア・ローマこそ理想。古典主義3大作家とは?

モリエール(著) 柴田耕太郎(訳)『モリエール傑作戯曲選集1』
www.choeisha.com/tr.html

人間性からも作品のタイトルからも興味をそそられることが多いモリエール。
古典主義の3大作家に興味を持ったら、まずはモリエールの作品を手に取ってみてはいかがでしょうか?