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書評
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『運慶の謎』山野貞子 著
朝日新聞 読書欄 平成20年(2008年)6月22日

いざ、鎌倉 戦乱の歴史をしのび、古都を歩く 評者・大上朝美

 アジサイのシーズン。鎌倉に観光客の姿は絶えない。しっとりとした古都のたたずまいの底にはしかし、戦乱と血の歴史が潜んでいる。(中略)
 鎌倉期を代表する仏師・運慶の生涯を小説仕立てで描く『運慶の謎』でも、運慶が生きた平安末から鎌倉初期が、いかに戦乱に満ちていたかが縦軸になる。寺が焼かれ、仏像が焼かれ、しかしその破壊の中から再生への希求も生まれるのだ。運慶は「本当に神仏はあるのか」と疑う仏師として登場する。(後略)

僧兵が争いを繰り広げる仏教界に不信を抱き、後に奈良・東大寺南大門の仁王像を合作する快慶には不快感を持ち、妻以外の女性との間に盛んに子をなす。精力的で人間くさい運慶像が描かれる。

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