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『詞葉集 あきらめの旅にしあれば』福地順一 著
「陸奥新報」書評欄 平成29年(2017年)3月22日
〝言の葉〟横断する力業 評者・内海康也(詩人) |
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『人魚姫』ハンス・クリスチャン・アンデルセン 著 マリアンヌ・クルーゾ 画 阿部久子 大竹仁子 訳
「こどもの本」 平成29年(2017年)4月号
アンデルセン「人形姫」に沈む 評者・松井るり子(文筆業) |
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『ある投票立会人の一日』イタロ・カルヴァーノ著
柘植由紀美 訳
週刊読書人 平成29年(2017年)1月6日
参政権という市民権の拡大の深い意味を内省的に思索
評者・伊田久美子
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『ある投票立会人の一日』イタロ・カルヴァーノ著
柘植由紀美 訳
図書新聞 平成28年(2016年)12月5日
重く複雑なリアリズム
評者・橋本勝雄
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『老兵は死なず ダグラス・マッカーサーの生涯。』ジェフリー・ペレット╱林 義勝、寺澤由紀子、金澤宏明、武井 望、藤田怜史訳
軍事史学 第52巻 第3号(通巻207号) 平成28年(2016年)12月1日
評者・池田直隆
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『ある投票立会人の一日』イタロ・カルヴァーノ著
柘植由紀美 訳
河北新報 平成28年(2016年)11月27日
新刊抄
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『ある投票立会人の一日』イタロ・カルヴァーノ著
柘植由紀美 訳
秋田魁新報 山梨日日新聞 他 平成28年(2016年)11月6日
新刊紹介
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『ペーター・フーヘルの世界―その人生と作品』斉藤寿雄
週刊読書人 他 平成28年(2016年)11月4日
読書人コーナー 出版メモ
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『季刊文科69号』「地蔵千年、花百年」柴田翔
讀賣新聞 文芸欄 文芸月評 平成28年(2016年)9月27日
老いる、豊かに実る 促されて自身と対話
評者・待田晋哉(文化部)
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『アメリカの内なるヨーロッパ紀行(電子書籍)』加藤 元 著
米澤新聞 平成28年(2016年)8月24日
加藤さんの紀行文「アメリカの内なるヨーロッパ紀行」が電子書籍化
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『拝啓、福田直樹様。』尾藤貴志 著
ボクシング・ビート 平成28年(2016年)7月号
「世界一のボクシングカメラマン」を描く
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『老兵は死なず ダグラス・マッカーサーの生涯。』ジェフリー・ペレット╱林 義勝、寺澤由紀子、金澤宏明、武井 望、藤田怜史訳
週刊読書人 読物文化 平成28年(2016年)6月3日
マッカーサーという特異な個性
人間組織の機微が巧みに捕らえられている
評者・竹内修司(編集者)
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『絵』澤井繁男 著
書評(関西大学生協刊) 平成28年(2016年)春季号
『絵』を読む
評者・浦西和彦(関西大学名誉教授)
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『改訂 NIEで町づくり』山田 明 著
西日本新聞 平成27年(2015年)2月18日
新聞作りで町づくり
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『スマホ汚染 新型複合汚染の真実!』古庄弘枝 著
琉球新報 読書欄 平成27年(2015年)2月15日
電磁波、化学物質に警鐘
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『昭和文学の傷痕』坂本満津夫 著
図書新聞 平成26年(2014年)11月28日
昭和初期の文学検証
文芸同人誌から時代読み取る
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『昭和文学の傷痕』坂本満津夫 著
図書新聞 平成26年(2014年)11月1日
昭和文学史を彩った同人誌七誌を取り上げて紹介し、解説
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『貞子の恋』香山マリエ 著
新潟日報 読書欄 平成26年(2014年)10月12日
娘による芸術家夫婦の評伝
評者・勝又 浩(文芸評論家)
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『昭和文学の傷痕』坂本満津夫 著
福井新聞 平成26年(2014年)10月3日
弾圧から鋭敏な作品群
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『アルザスワイン街道 —お気に入りの蔵をめぐる旅—』森本育子 著
東京新聞 読書欄 平成26年(2014年)9月8日
〈旅にテーマを〉ワイン育む土地の魅力
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『液状化の町から』名取二三江 著
週刊朝日 週刊図書館 平成26年(2014年)8月22日号
傾いた家で歪んでいく日常の暮らし
評者・芹沢俊介(評論家)
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『アルザスワイン街道 —お気に入りの蔵をめぐる旅—』森本育子 著
讀賣新聞夕刊 READ & LEAD 平成26年(2014年)8月5日
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『教師の仕事はすばらしい』小林公司 著
讀賣新聞 地域欄 平成26年(2014年)6月6日
「愛と情熱」教師人生一冊に
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『フィスティナ・レンテ—メディチ家 もうひとつの物語』豊田正明 著
週刊エコノミスト Book Review 平成26年(2014年)5月6日・13日合併号
日本経済の再生に必要な「急がば回れ」の精神
評者・井堀利宏(東京大学大学院教授)
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『どーしてわたしにはムシバがないの?』いなばこうじ 著
少年写真新聞 小学図書館ニュース 平成26年(2014年)5月8日号
おもしろいよ! 体の本
健康診断をきっかけに体に関係する本を読んでみよう
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『皇女タラカーノワ』原 求作 著
図書新聞 平成26年(2014年)4月12日
タラカーノワの数奇な運命を活写
歴史というものが王権の物語ではなく、人間の物語だとするならば、
史実というものは、まさしく物語そのものなのだ
評者・黒川 類(評論家)
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『行末』佐野正幸 著
神奈川新聞 読書欄 平成26年(2014年)3月23日
文学修行の明け暮れの後に
昔懐かしいモノクロ映画を見ているような気分になる。時代設定は戦後間もないころだろうか。1958年の売春防止法施行まで赤線地帯だった東京・玉の井といえば、永井荷風をはじめ、多くの文士が出入りした。
大学を出た後も、仕事に就かず、ぶらぶらしながら文学修行に明け暮れる若者たち。主人公の敬助も、そんな裕福家庭に育つ書生のひとり。空疎な内容を、深遠な論理のように振りかざす仲間たちと同人誌をつくる。
意欲はあっても、才能がないのに創作で身を立てようとする敬助を兄が責め立てる。兄弟は激しくののしり合うが、父は泰然と見ている。富裕層の余裕がうかがえる。
叔父は駆け落ち同然に実家を飛び出した。歳月は流れ、老いた妻が病にかかる。敬助はカネの工面を頼まれて、父や文士仲間から借金して回る。
同人誌仲間に美しい女性がいた。敬助は淡い恋心を抱くが、デートを重ねても一線を越えない。そのもどかしさを気にしているうち、同人誌のリーダー役の男が意外な行動に出た。
もったいぶった文章と難解な漢字がやたらと出てくるので、読むのに難渋する。昔の小説を彷彿とさせるための巧妙な意図かもしれない。著者は横浜生まれ。(風)
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『中世ラテン語動物叙事詩 イセングリムス —狼と狐の物語—』丑田弘忍 著
図書新聞 平成26年(2014年)3月22日
ヨーロッパにおける動物叙事詩の原点
貪欲な狼修道士が破滅へと至る経緯を描く
評者・檜枝陽一郎(立命館大学教授)
本書は、12世紀中葉に成立した6574行からなる動物叙事詩の邦訳である。ラテン語による原書は7巻から構成され、12の様々な事件が連続しながら語られ、全体として1つの完結した作品に仕上がっている。様々な事件とは、(1)燻製肉の分配、(2)魚取り、(3)イセングリムスの土地測量、(4)宮廷会議、(5)動物たちの巡礼、(6)狐と雄鶏、(7)修道院のイセングリムス、(8)イセングリムスと去勢馬、(9)イセングリムスとヨセフ、(10)獲物の分配、(11)イセングリムスの誓い、(12)イセングリムスの死のことをいう。このうち(5)(6)(7)は時間的に最も早く起こった事件であって、猪が語る回想という体裁をとって物語の内部に挿入されている。イセングリムスというのは主人公である狼の名前で、その仇敵である狐はレイナルドゥスという。
物語は、ある朝、狼のイセングリムスが食べ物を探して森からやって来て、狐のレイナルドゥスに遭遇するところから始まる。伯父と甥の間柄とはいえ、狼は大口を開けて狐を食べようとした。そこに燻製肉を引っ提げた農夫が通りかかり、狐が失敬した燻製肉を狼が独占して、狐が貰ったのは肉を吊していた柳の枝だけであった。出だしが唐突に感じられるのは、時系列上あとに起こった事件が冒頭に来ているせいである。しかし全体の構成を見ると、それにも意味がある。狼が燻製肉を独占するという事件は、結末でイセングリムスが雌豚サラウラとその眷属に食いちぎられて死ぬという狼の破滅を暗示しているからで、肉を独占した者が最後には逆に食われてしまう。物語のあら筋は、狼が破滅へと至る経緯を示しており、そのため狼の全面的勝利を語っている燻製肉の分配の話から始めるのが好都合であった。全面的勝利のあと、狼は尻尾を失い、生き剥ぎにされたのち馬の蹄鉄が額に刺さり、羊の突進によって痛めつけられ、再度生き剥ぎにされ、足を一本失い、ついに豚に食いちぎられる。
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『環境教育論—現代社会と生活環境—』今井清一/今井良一 著
週刊読書人 平成26年(2014年)3月16日
「ポスト3・11」の環境教育に最適の良書
評者・戸田 清(長崎大学教員・環境社会学専攻)
本書は環境教育の教科書・入門書として執筆されたものであり、頁数のわりに本体価格が比較的安いのは、若い人たちへの配慮でもあろう。地球温暖化と気候変動について詳述するのはこの分野に共通のことであろうが、異常気象の解説が詳しいのは本書の特徴であろうか。放射線について章をもうけたのは本書の特色で、全体の構成とあわせて、本書を「ポスト3・11」の環境教育に最適の良書としているように思われる。ほかに本書の特色として、クルマ社会(本書の表現では「車社会」)の問題点を詳述、「水の浪費大国」の章をもうける、「食料の輸入大国」の章をもうける、遺伝子組み換え作物について詳述、せっけんと合成洗剤の比較について詳述(節の題は「合成界面活性剤の不安」、ダムはこれ以上要らないとの指摘(92頁)、ゴルフ場による環境破壊への着目(87頁)、環境教育と消費者教育の関連性を重視したこと、などであろう。
「車の六悪」として①地球を温暖化させる、②大気を汚染する、③酸性雨を降らせる、④騒音をまき散らす、⑤〝走る凶器〟になる、⑥大量の廃棄物を出す、があげられており、路面電車を残しておくべきだったと指摘する(21頁)。ところで東京や関西の路面電車はほぼ消滅したが、広島・長崎の路面電車はいまも健在である。フランスでは、自動車からの浮遊粒子状物質の排出が原因の死亡者数が交通事故による死亡者数とほぼ同数になっているそうだ(23頁)。ディーゼル車のゆるい規制や税制上優遇は「皮肉にも政府が高公害の普及を促進していることになる」と指摘する(24頁)。「自動車市場には環境にやさしくない自動車が増え続けている」(31頁)のは特に米国が典型的だ。「まったく車なしというわけにはいかないであろうが、ドライバーが地球環境を守る最大のコツは車に乗らないことである」(33頁)。
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『八王子だるまの作者 井上竹次郎伝』本木達也 著
週刊読書人 平成26年(2014年)1月24日
逝きし世の面影
かつての日本人の姿・生き方を描く一代記
評者・安宅夏夫(詩人)
本著は、日露戦争で砲兵として戦うも負傷して九死に一生を得て帰還後、生い育った八王子で達磨製作に取り組んだ井上竹次郎の一代記だ。大冊だけに主人公の家族・親族の姿も活写されていて、薬学の道に進んだ次女判子と著名なクリスチャン綿谷礼利(後に京都大学舎監)との出会い。第二次大戦の終戦時にドイツ東北地方のヴリーツェンに赴いて、同市の伝染病治療に尽くし、現地で死亡、平成12年に同市役所前に顕彰碑が建立されている肥沼信次のことなど、感動する。
主人公竹次郎が体験した日露戦争も巨細に描くが、「前線将兵の四分の一が脚気になり、歩行困難・息切れ・むくみなどを呈した。日本兵の突撃は酒に酔っているようだった」という記録が引かれ、かつ著者が参考資料に使用した(日露戦争の十年前の)日清戦争の際の東京予備病院業務報告に「此日より第一分院(外桜田町)の患者は脚気予防として麦飯(米七分、麦三分)を給す」という記載を見出して、日露戦争で脚気の治療が議論になる十年前に、既に陸軍軍医の一部に「麦飯による脚気治療」の知識があったことを示している、とチェックする。これは両戦争の際の軍医部長森林太郎(鴎外)の責任だと糺されていることに関わるが、鴎外と同窓の著者ならではの、責重な発見だと思う。
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『「ドイツ伝説集」のコスモロジ—配列・エレメント・モティーフ—』植 朗子 著
こどもとしょかん 第139号 平成25年(2013年)10月20日
19C初に発表されたグリム兄弟の未完の『ドイツ伝説集』。その作品配列や構成の分析と、それを基に描かれ方を論じる。博士論文に加筆。
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『激動のなかを書きぬく──20世紀前半のドイツの作家たち』山口知三 著
図書新聞 平成25年(2013年)10月19日
マン父子を軸に二〇世紀前半のドイツ文学の精神史を読む
ドイツ保守主義、汎ヨーロッパ、民主主義理念の相克と紐帯
評者・川上 登(記録作家)
ドイツ文学者の山口知三氏はドイツ作家トーマス・マン(一八七五―一九五五年)とクラウス・マン(一九〇六―一九四九年)父子を軸として、これまで『ドイツを追われた人びと』(人文書院、一九九一年)、『廃墟をさまよう人びと』(人文書院、一九九六年)、『アメリカという名のファンタジー』(鳥影社、二〇〇六年)を書きついできた。前の二書は反ナチス亡命文学と敗戦から東西分断にいたる戦後文学をそれぞれ論じたもので、三冊目はヨーロッパにおける東と西からの影響を踏まえて、マン父子がロシア・ソ連とアメリカに結びつけたファンタジーの軌跡を読み解いた。本書はそれらに続いて、マン父子のヴァイマル時代および亡命時代の文学、クラウスと同世代の作家ヴォルフガンク・ケッペンの文学を焦点に論じた一書である。前著と併せ読むことで、ドイツ文学をとおして見た二〇世紀前半期の時代精神がいっそう鮮明に像を結ぶ。ここではマン父子に焦点を当てて、本書を紹介しよう。
第一次世界大戦のさなか、トーマス・マンは『非政治的人間の考察』を刊行した。愛国と保守主義の立場から西欧のデモクラシーを批判し、「ドイツのプロテスト」をここで高らかに宣言したマンは、西欧の文明にドイツの文化を対置し、唯美主義と人文主義に依って民主主義や人権の政治化を拒否したのである。それは「一九一四年夏の感激」、すなわち第一次世界大戦勃発に「不潔な世界の浄化」を期待したトーマス・マンのマニフェストだった。だが彼は、敗戦とヴァイマル共和国成立後の一九二二年になって「転向」をはたす。そして同年一〇月、講演『ドイツ共和国について』で共和国支持を表明したのである。
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『教師の仕事はすばらしい』小林公司 著
神奈川新聞 読書欄 平成25年(2013年)10月13日
荒れる学校へ体当たりで
いじめ、不登校、校内暴力、自閉症、事なかれ校長、乱行おやじ、鼻持ちならぬ母親…どれも聞きしに勝る。横浜と相模原の元中学教員が自らの体験を20話にまとめた。
書き手は潔癖で真っ正直な性分らしい、なにごとも体当たりでぶつかっていく。教室のなかには小学生のときからたばこを吸っている生徒がいる。シンナー少年にびんたを張ったら後日、その子に出合い頭に廊下で顔を殴られ2週間のけがをする。このことで自身、深く傷つく。なぜ学校が荒れるのか。何が閉塞感をもたらすのか。非行集団はときに思わぬ行動を起こす。昇降口でたき火をしたり、傘の先で教員の目を突いたり。
どの章、どの項目、どのページから読んでも話が通る。「相手が嫌がったら、それがいじめ」「ツッパリの歯止めは愛でなく罰。家裁調査官の10分足らずの面談で静まる」「彼らが怖いのは警察」「尊敬できる校長は何人もいなかった」などの告白には、現場育ちならではの切実さと、もうひとつ明快さがある。著者は大学卒業後、畜産会社から警察官を経て28歳の〝おくて〟で教員になった。一般社会で培った目と均衡感覚は重要な何かを暗示している。
ミラノ日本人学校での3年間の経験も面白い。三浦市に住む。(武)
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『放浪のユダヤ人作家ヨーゼフ・ロート』平田達治 著
図書新聞 平成25年(2013年)10月5日
作品論と都市文化論を交差させた初の評伝
評者・三輪智博(現代史研究)
パリのセーヌ左岸、カルチェラタンを抜けてリュクサンブール宮殿の前に出る。そこからオデオン方面に伸びるトゥルノン通りには、かつて、ナチスの迫害を逃れて亡命したドイツ語作家やジャーナリストたちが止宿していた。若き日のグスタフ・レグラーやアーサー・ケストラー、詩人のヨハネス・R・ベッヒャーたちが肩を寄せ合うようにしてここにいた。
彼らが反ファシズム人民戦線に身を投じてスペインヘ、ソ連へと去ったあと、東部ガリツィア出身のドイツ語作家が一人、トゥルノン通りに残って、ナチスによるパリ占領前の一九三九年、くずおれるようにここで最期を迎えた。作家が入り浸ったカフェ・トゥルノンがいまも残っている。その建物のファサードを見上げていくと、彼の名を刻んだ記念碑が目に入る。その名はヨーゼフ・ロート。本書の末尾には、著者が撮ったトゥルノン通りと記念碑の写真が添えられている。
ドイツ・オーストリア文学と中欧都市文化論を専門とする平田達治氏は、半世紀近くにおよぶロート研究を本書にまとめた。日本では初の本格的モノグラフィーである。
一八九四年、当時はオーストリア=ハンガリー二重帝国の最東端、ガリツィアのブロディ(現在はウクライナ領)に生まれたロートは、そこからレンベルク(現在のリヴィウ)をとおってウィーン、ベルリン、パリヘと、ヨーロッパの東から西へ空間的に横断した。著者は都市文化論と作品論とを交差させ、丹念な現地調査を踏まえながら、「放浪のユダヤ人作家」の移動の軌跡と作品世界とを立体的にえがくことに成功した。ロートを支えた亡命出版人や友人たちの姿も丁寧にえがきこみ、文学的芳香に満ちた評伝に仕上げている。
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『石川啄木と北海道—その人生・文学・時代—』福地順一 著
しんぶん赤旗 読書欄 平成25年(2013年)9月8日
文学・思想・人生を形成した足跡 評者・櫻井健治(国際啄木学会評議員)
「予は新運命を北海の岸に開拓せんとす。これ予が予てよりの願なり。」と日記に記した啄木は、新しい生活基盤を築くため、1907(明治40)年5月5日、函館に上陸した。しかし、北海道生活は、この日かち翌年4月25日までの357日間にしかすぎなかった。
この間、生活根拠の場を函館から札幌、さらに小樽から釧路へと転々とした。新運命を賭けたはずの地が、なぜか漂泊の地と化し、その生活環境は、貧窮状態から抜け出せないままに終わってしまったといってよいだろう。
本書は啄木の1年に満たない漂泊生活を、表面的な生活領域のみに視点をあてたのではなく、長年にわたる実に丹念な調査のもとに精査し集大成されたものである。
北海道に住む啄木研究家としての利を遺憾なく発揮してまとめられた本書は、「啄木と函館」「啄木と札幌」「啄木と小樽」「啄木と釧路」「離道」という全5章から構成されている。
本書の特徴は、啄木が移り住んだ土地での彼を取り巻くさまざまな人物を詳細に追究したところにあるが、かつてこれほどまで深く掘りさげた研究はなかっただけに、今後の啄木研究にいっそうの効果をを与えることが期待される。
著者のこの成果は、北海道における啄木の文学・思想・人生を決定づけるための裏付けを確かなものにしたと言ってよく、北海道が上京後の石川啄木を形成していく上での大きな要因を果たしたことを知ることが出来るのである。
啄木没後101年の今年、啄木と北海道に関わる金字塔ともいえる本書が誕生したことに、心から称賛を贈りたい。
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『石川啄木と北海道—その人生・文学・時代—』福地順一 著
岩手日報 読書欄 平成25年(2013年)6月30日
「漂泊の一年」丹念に調査
高校の国語教員を長く勤めた札幌市在住の啄木研究家が1970年代からの研究成果をまとめた。啄木の文学に大きな影響を与えた北海道時代について、史料や関係者から仕事や生活、交友などを丹念に調べ、「漂泊の一年」の全体をとらえようとした労作だ。
啄木が古里渋民を離れ、妹光子と津軽海峡を渡ったのは1907(明治40)年5月。函館の大火で職を失った後は札幌、小樽、釧路の新聞社を転々とする。翌年4月に函館を経由して上京するまで1年足らずの思いは、後に歌集「一握の砂」の数々の歌に詠んだ。
北海道にいる間の作品は少ないが、新聞記者として多くの仕事を残した。飛び抜けた筆力や文学的感性を生かして、事件や災害から時事評膳、文芸まで多くの記事を書いたが、「小樽のかたみ」と題した切り抜き帳を作った小樽時代や一部の署名記事を除いて筆者の特定が難しい。著者は、啄木の日記に記された出来事などと付き合わせて筆者を推定。その成果は筑摩書房版「石川啄木全集」第8巻「啄木研究」(1979年)にも反映された。
本書では、当時の社会状況や時代背景も調査。政治家が自らの勢力拡大のために直接経営することが一般的だった当時の新聞社の状況や、開通したばかりの鉄道の様子、暮らした街の歴史や気象などを盛り込んだ。啄木と直接交友のあった人物だけでなく、勤務した学校の校長、記者として採用した新聞社の経営者ら、研究者がこれまで目を向けてこなかった「関係者」に対象を広げ、興味深い情報を収めた。(後略)
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『解き明かされる 日本最古の歴史津波』飯沼勇義 著
河北新報 読書欄 平成25年(2013年)5月20日
「貞観」以前の根拠詳述
東日本大震災前の16年前から、仙台平野に近い将来、巨大津波が襲来すると警告してきた郷土史家が、過去2000年間に仙台平野を中心に起きた巨大津波に関する研究成果をまとめた。津波の歴史を明らかにすることで、津波被害をなくしたいと強く訴える 「貞観津波」(869年)以前に起きたと著者が指摘する東北太平洋沿岸津波(95〜110年)や太平洋沿岸津波(300〜330年)、名取沿岸津波(500年前後)などについて、その根拠を詳述した。 仙台市若林区の「沓形遺跡」の発掘調査で、約2000年前の津波痕跡が発見されたことに関連して、津波発生が国家統一が進む一因になったとの説も展開している。 著者はさらに、貞観津波以前に巨大津波は何回も起きているにもかかわらず、「こういう重大な歴史は古文書には書かれていない」と指摘。さまざまな伝承や文献、地形を分析することで、これらの津波の発生を裏付けられることを示す。 津波や地震の研究の進め方や、文献資料の考証の仕方を根本的に変えていかなければならないと強調している。 本書は4月、日本図書館協会の選定図書に選ばれた。 著者は1930年、仙台市生まれ。市内の公立学校教諭を務めた後、幼稚園長などを歴任。教諭時代から津波などの歴史の研究を続けている。 1995年には「仙台平野の歴史津波」を出版し、津波対策強化の必要性などを訴えてきた。
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『外科医と志』山内昌一郎 著
長崎新聞 平成25年(2013年)4月21日
外科医としての豊富な経験と知識をもとに、病気や体の仕組みについて分かりやすく説明。医師としての心構えや志を伝える。著者が経験した多種多様な症例、自身の半生などについても語っている。
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『アルバトロスの羽根』菊池英也 著
下野新聞 読書欄 平成25年(2013年)3月31日
鳥島はかつてアホウドリの唯一の繁殖地だった。八丈島出身の全右衛門という男が開拓名目で根こそぎ捕殺に来るまでは。主人公の「ぼく」は全右衛門一派が、ぼくの仲間を捕殺するためのおとりだ。役割を終えると殺され、パリで高級帽子工房「アトリエ・ジュネ」一押しのウール製帽子の美しい羽根飾りに変身する。
帽子を購入したクローデル夫人は高級娼婦。男を手玉に取るが、苦しい事情がある。そんな夫人を慕う鳥類学者のユベールと妹のリニエ。やがて不幸が夫人を襲い、帽子はリニエからユベールの手に渡り、ぼくは故郷鳥島の空に放たれる。
時空を超え、舞台をがらりと変えての転生譚。強欲な人間がうごめく世界で優しいユベール兄妹。不器用でのろまなアホウドリは最後に大空いっぱいに羽を広げ、未来に向けて飛び立つ。蒼空の王者アルバトロスの誕生だ。
著者は宇都宮市出身。本書は8冊目の新作で、アホウドリを素材にしたボードレールの詩が通奏低音を奏でる。ロマンの香り漂う冒険譚でもあり、飽きさせない。ブルーとグレーが基調の表紙絵も効いている。
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