ある投票立会人の一日
イタロ・カルヴァーノ
柘植由紀美 訳
- 「文学の魔術師」イタロ・カルヴィーノ。
奇想天外な物語を魔法のごとく生み出した作家の、二十世紀イタリア戦後社会を背景にした知られざる先駆的小説。
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人間存在の根源は何に拠っているのかという主人公の問いかけは、一方で自分の意思を表明できない者たちに代わって投票行為をする修道女の存在をどのように考えるかという問いかけにもなる。(中略)そうした存在が社会的に果たしている役割の意味を主人公アメリーゴは手放しで肯定できない。カルヴィーノという作家なればこそ、「意識の文学」をもうひとつ上位の眼でくるまずにはいられないのである。
(「文学ノート・私のカルヴィーノ論—解説にかえて」より)
目次
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ある投票立会人の一日
文学ノート・私のカルヴィーノ論── 解説にかえて
カルヴィーノ文学の軌跡が示唆するもの
逆転する作家──カルヴィーノ文学とヴィットリーニ
「物語」からはみ出す「私」とカルヴィーノ文学の軌跡
著者略歴
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イタロ・カルヴァーノ(Italo Calvino)
1923—85年。イタリアの作家。
第二次世界大戦末期のレジスタンス体験を経て、『くもの巣の小道』でパヴェーゼに認められる。
『まっぷたつの子爵』『木のぼり男爵』『不在の騎士』『レ・コスミコミケ』『見えない都市』『冬の夜ひとりの旅人が』などの小説の他、文学・社会評論『水に流して』『カルヴィーノの文学講義』などがある。
訳者略歴
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柘植 由紀美(つげ ゆきみ)
2009年10月から2011年9月までトリノ大学文学部在籍。
著書
『天に架かる川』(近代文藝社、1994年)
『二つの坂道』(同時代社、2000年)
『空中物語』(同時代社、2004年)他。
『葦牙』(「葦牙」の会編集、同時代社発行)などに連作短編を多数執筆。