『親からのDNAで人生は決まるのか?』小林 一久 著
北大医学部同窓会新聞 平成23年(2011年)6月23日
人生は遺伝子によってほぼ決まると言う人もいるが、本書では遺伝子と生後の教育や努力の関わりについてあらゆる方面から検討し、如何に生きたら幸せになれるかを様々な例を挙げながら追求している。 運動能力は素質と関係していることが多いが、学業成績では数学と国語では遺伝の影響はなく(社会と理科では関係がある)、仕事関係では、生まれつきの器用不器用はあっても、成果は殆ど努力で決まると述べている。 出雲市で開業している天才的に大腸鏡が上手な医師を紹介しているが、その人は開業する前、同僚は車などを買っているのに、自分は給料やボーナスをはたいて200万円もする大腸鏡や数十万円するコロンモデルを買って仕事が終わった夜十時から十二時まで毎晩練習したとのことで、天才とか名手と言われる人にはそれなりの努力があるものだと述べている。 本書の後半部分は、遺伝子と生き方について書いており、他人を自分と同様にとことん大切にして、人のために生きる時に全ての遺伝的要素を超越して最高の仕事ができて、最高に幸せになれると結んでいる。 著者とはたまたま同じ職場で働いているが、卒業年度では大先輩である。しかし偉ぶるわけではなく、救急当直等も担当し、若手と全く同じ立場で、心から患者のことを思って仕事をしている。生涯人のために尽くす気概でつねに挑戦しており、その体験から書かれたもので、勇気と力を与えてくれる正に人生の羅針盤である。(西山 徹)
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