奇跡の女優 芦川いづみ
倉田 剛
いま、この国で小さな奇跡が起きている!一人の女優をめぐって……
- 引退から半世紀以上を経て、一人の女優が奇跡を起こしている。
昭和の名作を上映する映画館では彼女の出演作品の特集が繰り返し組まれ、その人気は当時のファンのみならず、当時を知らない若者にまで裾野を広げている。
本書は出演全映画作品を紹介し、彼女の魅力に迫るとともに、貴重な写真を多数収録した、ファン必見の一冊である。
- 『硝子のジョニー 野獣のように見えて』が、ほかの病者を演じた芦川の諸作に比して、神話的であるのも本作が原初の輝きに満ちているからだ。生まれ育った海にまた還っていくみふね=芦川を見るとき、悲劇的ラストシーンというより永遠の無垢な少女の休息の時を想う。(本文より)
目次
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はじめに
第一部 芦川いづみ論
透明なヒューマニズム ─ 芦川いづみ論
第二部 芦川いづみ全映画作品
1 日活女優・芦川いづみ
2 松竹映画の芦川いづみ
『東京マダムと大阪夫人』『蛮から社員』『若き日は悲し』
3 巨匠の夢
『乳母車』『陽のあたる坂道』『若い川の流れ』
4 最多監督・西河克己
『春の夜の出来事』『東京の人』『しあわせはどこに』『孤獨の人』
『美しい庵主さん』『風のある道』『青年の椅子』『青い山脈』
『四つの恋の物語』『気まぐれ渡世』
5 あの手この手・中平康
『学生野郎と娘たち』『あした晴れるか』『あいつと私』『誘惑』
『紅の翼』『アラブの嵐』『結婚相談』『喜劇 大風呂敷』『その壁を砕け』
6 はかなき生・病者の映像
『硝子のジョニー 野獣のように見えて』『風船』『佳人』『しろばんば』
7 戦争映画のかげに
『七つボタン』『最後の戦斗機』『人間魚雷出撃す』『硫黄島』
8 「ミュージカル」の中で
『ジャズ・オン・パレード1956年 裏町のお転婆娘』
『お転婆三人姉妹 踊る太陽』『ドラムと恋と夢』
9 妹あるいはフィルムノワール
『死の十字路』『銀座の沙漠』『完全な遊戯』『ゆがんだ月』『大学の暴れん坊』
10 1950年代の芦川いづみ(五〇年代芦川いづみ出演作・補遺)
1955年 『大岡政談 第一話 人肌蝙蝠』『沙羅の花の峠』
『未成年』『続警察日記』
1956年 『火の鳥』『洲崎パラダイス 赤信号』
1957年 『哀愁の園』『無法一代』『「男対男」より 命も恋も』
『『幕末太陽傳』『白い夏』『江戸の小鼠たち』
1958年 『知と愛の出発』『夜の狼』
1959年 『祈るひと』『東京の孤独』『男なら夢をみろ』
『『清水の暴れん坊』『男が命を賭ける時』
11 ある種の愛情=LGBTQ映画
『青春怪談』
12 コケティッシュに気をつけて
『春の夜の出来事』
13 二つの『嵐を呼ぶ男』
『嵐を呼ぶ男』(1957、1966)
14 姉あるいは憧れのひと
『無鉄砲大将』『美しい暦』
『真白き富士の嶺』『その人は遠く』
15 コメディエンヌの爆発
『堂堂たる人生』
16 社会を告発する
『青春を返せ』
17 タイホされたい!
『喧嘩太郎』
18 働く女の時代
19 1968・最後の年
『大幹部 無頼』『娘の季節』『孤島の太陽』
20 1960年代の芦川いづみ(六〇年代芦川いづみ出演作・補遺)
1960年 『やくざの詩』『あじさいの歌』『青年の樹』
『霧笛が俺を呼んでいる』『一匹狼』『コルトが背中を狙ってる』
1961年 『街から街へつむじ風』『ろくでなし野郎』
『散弾銃の男』『いのちの朝』
1962年 『男と男の生きる街』『青い街の狼』『憎いあンちくしょう』
『執炎』(1964)『金門島にかける橋』
1964年 『成熟する季節』『こんにちは赤ちゃん』
『鉄火場破り』『若草物語』
1965年 『日本列島』
1966年 『源氏物語』『日本任侠伝 血祭り喧嘩状』『太陽が大好き』
『風車のある街』『夜のバラを消せ』『愛と死の記録』
『不敵なあいつ』『私は泣かない』
1967年 『赤木圭一郎は生きている 激流に生きる男』『君は恋人』
第三部 芦川いづみフィルモグラフィ
参考文献
あとがき
著者略歴
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倉田剛(くらた・たけし)
映画評論家。1950年、三重県生まれ。
大阪の府立高校で国語を担当、2011年定年退職。
第七藝術劇場企画アドバイザー、関西=ヤマガタネットワーク代表、市川準研究会代表。
2021年より三重でジェンダーの視点からダイバーシティを映画で考える上映会や食の安全を考える上映会を企画。その他市民向けの映画講座を担当。
著書:
『曽根中生 過激にして愛嬌あり』(ワイズ出版、2013)、『ドキュメンタリーが激突する街 山形映画祭を味わう』(現代書館、2015)、『映画監督 市川準 追憶・少女・東京』(ワイズ出版、2018)。
編著:
『平野の思想 小津安二郎私論』(ワイズ出版、2010)。