価格
2420円(税込)
ページ数
204ページ
発行日
2016年6月10日
ISBN
978-4-86265-551-6
カフカと「お見通し発言」
—「越境」する発話の機能—
西嶋義憲
- カフカ作品の言語学的分析
これまでになかったまったく新しい視点からカフカ作品を俯瞰することで、カフカの世界が新たな容貌を現わす。本書によって切り拓かれた発話の用法は従来の物語研究に一石を投じるものとなろう。
- 文学技法として語り手が登場人物の内面に介入し、それを叙述することはある。しかし、登場人物という点で同じレベルに属するはずの人物が、会話相手の私的領域の内面世界に介入し、それを叙述するというのは日常的な会話としては通常ありえない。そこには非日常的な何かが起こっている、もしくは、何らかの戦略としてその表現が用いられていると考えていいだろう。(本書より)
目次
- 序 章 2人称断定文と「お見通し発言」
第1章 領分の越境と話の展開─断片『笛』の証例─
第2章 優位性の確立(1)─短編作品『判決』と『流刑地にて』の証例─
第3章 優位性の確立(2)─長編作品『訴訟(審判)』と『城』の証例─
第4章 共感の表明─長編作品『失踪者(アメリカ)』の証例─
第5章 「お見通し」行為としての手紙─『父への手紙』の証例─
第6章 「お見通し」能力と優位性─『小さな女』の証例─
第7章 「お見通し発篇」とメタ言語的説明
第8章 レトリックとしての「お見通し発言」の翻訳可能性
終 章 越境する会話
著者略歴
- 西嶋義憲(にしじま・よしのり)
1957年埼玉県浦和市(現・さいたま市)生まれ。
1988年広島大学大学院文学研究科博士課程後期中退。
現在 金沢大学人間社会学域経済学類教授。
専門は社会言語学、テクスト言語学。
著書
『カフカと通常性—作品内会話における日常的言語相互行為の「歪み」—』(金沢大学経済学部研究叢書15、2005)。
『カフカ中期作品論集』(共編著、同学社、2011)。