価格
4180円(税込)
ページ数
646ページ
発行日
2016年8月19日
ISBN
978-4-86265-562-2
メディア
中日新聞で紹介
ドストエフスキーの作家像
木下豊房
「ドストエフスキーの商品化」マスメディア・出版界の劣化現象を厳しく批判!
二葉亭四迷から小林秀雄・椎名麟三、武田泰淳、埴谷雄高など戦後派文学者にいたる正統的な受容を跡づけ、国際的研究の水準を踏まえて、このロシア古典作家の文学の本質に迫る。
安易な商品化に走るマスメディア、出版界の劣化を撃つ!
ドストエフスキーの小説の芸術的システムにおいては、作者の位置は、つねに作品のトータルな意味を補完する〈仮想現実〉のごときものとしてあって、多種多様な形で現象する。作者の立場や主題、もしくは語りの解釈を作者の実在の領域として解釈することは正しくない。なぜなら作者の立場はまさしく作品の複数の意味のシステムとして現れるのであり、その際、小説のフォームの諸関係こそ、作者の芸術的能動性の実際の発現なのである。
G. シチェンニイコフ編『ドストエフスキー・便覧事典』(1997)「作者の位置」より
目次
まえがき
第1章 作家像を問う
第2章 作家のリアリズムの特質
第3章 作品における作者の位置
第4章 追憶の意味と宗教的思索
第5章 再読『カラマーゾフの兄弟』—その主題構成について考える
第6章 比較文学的論考
第7章 ドストエフスキー文学翻訳の過去と現在
第8章 国際的交流の場から
第9章 亀山現象批判に関する資料
あとがきに代えて
著者略歴
木下 豊房(きのした とよふさ)
1936年、長崎市生まれ。
早稲田大学第一文学部卒、
同大学院文学研究科博士課程(「露文学」)単位取得・満期退学。
千葉大学名誉教授
1995年より国際ドストエフスキー協会(IDS)副会長
ドストエーフスキイの会代表(1969年の会発足以来、活動を主導し現在にいたる)
著書
『近代日本文学とドストエフスキー —夢と自意識のドラマ』成文社(1993)
『ドストエフスキーその対話的世界』成文社(2002)
ロシア語論文集:
《Антропология и поэтика творчества Ф.М.Достоевского》(Санкт-Петербург, 2005)
(『ドストエフスキーの創作の人間学と詩学』サンクト・ペテルブルグ、2005)
編著
安藤厚共編『論集・ドストエフスキーと現代』多賀出版(2001)
千葉大学国際研究集会報告論集(ロシア語)
《21 век глазами Достоевского переспективы человечества》(Москва, 2002)
(『ドストエフスキーの眼で見た21世紀—人類の将来』(モスクワ、2002)
翻訳
アンナ・ドストエーフスカヤ『ドストエーフスキイ夫人 アンナの日記』河出書房新社(1979)
Я.Э.ゴロソフケル『ドストエフスキーとカント —「カラマーゾフの兄弟」を読む』みすず書房(1988)
トルストイ『人生論』(「人生の名著」12所収)大和書房(1968)