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インゲボルク・バッハマンの文学
髙井絹子
- 〈作家と作品の全体像に迫る画期的評論〉
1950年代、鮮烈な抒情詩により戦後ドイツ文学の「希望」とまで呼ばれたインゲボルク・バッハマン。60年代以降の作品の評価は、常にスキャンダルと共にあった。そして73年、謎の多い死をむかえる。
目次
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序
第一章 五〇年代のバッハマン
第一節 バッハマンの文学的履歴
第二節 抒情詩人としての成功 …
二─一 一九五二年、ニーンドルフ
二─二 シュピーゲル誌のバッハマン記事
二─三 バッハマン作品をめぐる評論
⒜ ジークフリート・ウンゼルトの評
⒝ ヘルムート・ハイセンビュッテルの評
⒞ ハンス・エゴン・ホルトゥーゼンの評
⒟ ペーター・リュームコルフの評
第三節 成功の裏側
三─一 再び一九五二年、ニーンドルフ
三─二 五〇年代の四七年グループにおけるバッハマン
三─三 ジェンダー・バイアスという観点
三─四 受容の曲折 1
第四節 第一詩集『猶予期間』に見られる間テクスト性の問題
四─一 バッハマンの抒情詩
四─二 第一詩集から「猶予期間」─乱反射するイメージ
四─三 第一詩集から「暗いことを言う」─神話モチーフの改変
四─四 ツェランの詩二篇
⒜ 「コロナ」
⒝ 「エジプトで」
四─五 再び「暗いことを言う」、「正午前」そして「猶予期間」
四─六 心象のツェラン─第二詩集から「解き明かしておくれ、愛よ」
第二章 散文作品の展開
第一節 バッハマンの文学観─『フランクフルト講義集』を手掛かりに
一─一 詩人による文学講義
一─二 詩人の沈黙
一─三 唯美主義とモラル
一─四 政治性とイデオロギー
一─五 伝統の問題
一─六 文学の素材としての経験
第二節 短篇集『三十歳』概観
二─一 抒情詩人の散文
二─二 マルセル・ライヒ=ラニツキの批評
二─三 「ドイツマスコミのアイドル」の挑発
第三節 「ゴモラへの一歩」
三─一 誘惑者マーラとシャルロッテの「王国」ヴィジョン
三─二 シャルロッテの女性観と自意識の構造
三─三 「ゴモラへの一歩」と「すべて」
第四節 「ウンディーネ去る」
四─一 「芸術! ああ、芸術なんて」
四─二 芸術、あるいは芸術の素材の「寓意」としてのウンディーネ
四─三 再び、バッハマンの文学観
四─四 ウンディーネ・モチーフの二層構造
四─五 去ってゆくウンディーネ
四─六 芸術をめぐる対話?
第三章 ある文学スキャンダルの顛末
第一節 文学スキャンダルとは何か
第二節 フリッシュとバッハマン
二─一 文学スキャンダル前夜─出会いから別離まで
二─二 『私の名前をガンテンバインとしよう』はどういう小説か
二─三 ハンス・マイアーとマルセル・ライヒ=ラニツキの書評
⒜ ハンス・マイアーの書評
⒝ マルセル・ライヒ=ラニツキの書評
二─四 特異な文学スキャンダル
二─五 バッハマンの死、フリッシュの『モントーク岬』刊行
第三節 抒情詩「ボヘミアは海辺にある」
─『ガンテンバイン』に対する最初の文学的応答
三─一 作品成立の背景─フリッシュとツェランとバッハマン
三─二 作品成立の背景─ベルリンとプラハ
⒜ 反ファシズムとフェミニズムの接続
⒝ ユートピア的時空への「敷居」としてのプラハ
三─三 作品成立の背景─シェイクスピアの『冬物語』
三─四 言葉の複雑な編み細工─読解の試み
⒜ 破滅と再生
⒝ 「陸」と「海」の意味するもの
⒞ 悲劇から喜劇へ
第四節 もうひとつの間テクスト性
四─一 『マリーナ』の筋立て
四─二 『マリーナ』内在解釈の試み
⒜ イヴァン
⒝ マリーナ
⒞ 「父」
四─三 合わせ鏡の『マリーナ』
⒜ ジェンダー観のずれ
⒝ 「私的な事柄」の扱いをめぐる葛藤
⒞ 偽装される狂気
四─四 受容の曲折 2
結 語
参考文献
著者略歴
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髙井 絹子(たかい きぬこ)
1963年宮崎県生まれ。
大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程(ドイツ語ドイツ文学専攻)単位取得退学。
2012年9月、大阪市立大学大学院で博士(文学)の学位を取得。
現在、大阪市立大学准教授。専攻はドイツ文学。
共訳書
マティアス・ポリティキ『アサヒ・ブルース』松本工房
論文
「インゲボルク・バッハマンの放送劇『マンハッタンの善良な神』─二つの顔をもつ神」『世界文学』第116号
「インゲボルク・バッハマンとウィーン─観念的な地図の書き換えをめぐって」『人文研究』第65巻
「Ingeborg Bachmanns Unter den Mördern und Irren - zur Variierung der Täter-Opfer- Konstellation」『オーストリア文学』第33号
など。

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