価格
1760円(税込)
ページ数
562ページ
発行日
2018年7月30日
ISBN
978-4-86265-676-6
夢の弾力
石田隆一
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謎が謎を呼ぶエンターテイメント推理小説
メルトダウンを伴う未曽有の大惨事は、今回が初めてではなかった。
かつて同様の事故があったことの確実な証左となる「象の足」が、今なお原子力発電所の建屋の奥に鎮座している。
赤間が逢ってたちまち恋に陥った女教師は、毎夜、洪水の夢をみる。抗議の意志から水没する家に籠って溺死した父親の思い出に浸っているらしい。
この夏、彼女の受け持つクラスの少年が学校のプールで自殺したが(これも溺死だ)、残された遺書から思いがけないひらめきを得た赤間は、意図せず行政ぐるみの卑劣な不正を暴いてしまう。
町の繁栄を約束した原発誘致には、住民の構成を変えるという巧妙なからくりがあった。
だが、相次ぐ事故のために、すでに原発は利益に寄与できなくなっていた。今や町新たな方策を必要としていた。
そうした一連の陰謀を嗅ぎつけたためか、赤間はとつぜん一年前の愛人殺人事件の容疑で逮捕される。
冤罪と言い切れないのは、本人には自覚がないが、状況証拠は明らかに赤間に不利だったからだ。
なにしろ女の部屋を出るとき、赤間は内緒で十万円を失敬している。
しかも前日、つまらない諍いから興奮のあまり愛人の首を絞めている。もっとも死因は扼殺ではなかったのだが。
表紙のルソーの絵画は、そのときの二人の緊迫した状況を如実に表現している。
女は眠っているのか? それともすでに死んでいるのか?
目次
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第一篇 洪水の夢
第二篇 女教師の憂鬱
第三篇 水道バルブの呪縛
第四篇 否認される殺意
あとがき
著者略歴
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石田 隆一(いしだ りゅういち)
石川県七尾市在住。
ハウステンボス株式会社執行役員、
株式会社加賀屋顧問を経て、
遺書を書くつもりで創作活動に入る。
著書
『怪物 腹が一つで背中が二つの』(鳥影社)
『耳の中で小人が踊っている』(近刊)
『アルミニウムの湖』(近刊)