HOME>ヒマラヤの麓で —定年後、日本語を教える—
ヒマラヤの麓で —定年後、日本語を教える—
蔵田友義
一人の退職者がネパールの日本語学校でボランティアとして日本語を教えるまでの経緯や
現地での学校生活、日常生活、日本ではあまり知られていないアジア最貧国・ネパールの厳しい国情などを綴る。
そして山間の段々畑(テラス)で暮らす人々の姿から、幸福とは何かを考える。- 私を必要としてくれる場所をこの地に見つけた……
目次
-
まえがき ─ ヒマラヤの麓で
〈ネパール~その概要〉
第一章 なぜネパール? ─ 日本語学校までの経緯
日本の山から海外の山へ/ネパールの山へ/退職したら何をするの?/花粉も大きな問題
第二章 学校でわかったこと ─ ネパールの教育事情
1.「ポカラ日本語&文化センター(PJLCC)で教える
初回は生徒の希望を聞きながら/「陽射しのある部屋」を求めて移動/遅れても悪びれない「生徒」/「休み」が多く揃わない「足並み」/漢字の「読み」「書き」が苦手/非漢字圏での日本語学習は用紙の置き方から
2.日本語教育の普及活動
国際交流基金の「出張セミナー」/「国語」の文法は役にたたない/JICAはカトマンズに常駐
3.「ネパールの日本語学校」の現状
ポカラ中心街に約五〇の日本語学校/敷居が高く高額な「留学」/日本語学校は「留学あっせん業者」/女子はレストランで、男子はヤマト宅急便で「バイト」/難民申請の悪用で「来日」困難に
4.多くの民族言語とネパール英語
「言語の多様性」と「統一語」/ネパールでの「言語の多様性」の危機/「消滅の危機」を訴える言語学者たち/「新しい憲法」に記述された「言語」規定 59/受け続けるインドの影響/「エスペラント」はネパールにも/「レークサイド」英語は「話す」「聞く」の実践ばかり/「懐かしさ」の淵源を探る
第三章 ネパール人とのつき合い方 ─ レークサイド生活記
1.レークサイドの裕福なネパール人
「あかぬけた」場所/料理メニューは少ないがご飯はおなかいっぱい/服装に気をつかい、レジャーも盛ん/大切にしているコミュニティー/ホテルオーナーは「レークサイド二世」/レークサイドの書店主たち/メモしないネパール人 82/珍しい「ノート派」/お嫁さんにするならネパール人/大切にする「親せき」「同じ民族」/「時間を気にしない」ネパール流会合/子どもは有名な「ヒマラヤン ボーディングスクール(HBS)」へ/規則正しい寄宿生活/実情は休みの多い「ゆとり教育」/お金があれば子どもは「私立学校」へ
2.一日の過ごし方
日課は朝の散歩/ブランチは日向ぼっこをしながら/バスの中でもネパール社会を観察6/夕食までホテルの庭で火にあたる/夜は九時にはベッドへ/一日の予算は、合計二〇〇〇ルピー
3.「ラムロ(素晴らしい)」がいっぱい
各国料理に舌鼓/撮影ポイントがいっぱい/ダウラギリの遠景に感動8/「異国情緒満点」の雰囲気に浸る0/異分野の日本人と知り合いに/「現状満足主義」にシフトして
第四章 ネパールの「水」「トイレ」「ゴミ」事情
1.水事情(社会インフラとしてあまりにもお粗末)
日本人、欧米人にはネパールの水は飲めない/流水量は自然まかせ/乾期の水不足は身近なところにも/洗濯にも水は必要/大都市カトマンズの水不足は深刻/期待される「メラマチ飲料水供給プロジェクト」/水の確保は「最優先」だが/給水系統にも課題がたくさん/冬場のシャワーには工夫が必要/改良すべき蛇口
2.トイレ事情(オープントイレット=Defecation-free zoneをなくすことはできる?)
のぞまれる衛生環境の向上/女子学生主導の「トイレ設置」運動/「トイレ」といってもさまざま/下水処理にようやく取り組み始めたカトマンズ/トイレ事情は改善してゆくのだろうか
3.ゴミ事情(ネパール人はゴミが気にならない?)
町中のみでなく観光地までもゴミが/公共の場所は「ゴミ捨て場」/ゴミを捨てる前に考えよう!/目立たないが美化運動もある/環境問題というよりも健康問題/「昔の日本」を思い出させる土ぼこり/旅行者がお医者さんにかかるには
第五章 貧困問題考 ─ エネルギー事情と女性差別
1.停電の話はさけてとおれない
ネパールみやげはLEDライト/暮らしに重要な「停電スケジュール」/スケジュール以外の停電にあわてる/「不安定な電源」も心配/自家発電機がたよりなのだが/ネパール人は「場当たり対応」/「気の置けない」時間/「ネパール電力インフラ」の歴史、電力不足にいたるまでの経緯/現金自動支払機(ATM)だってとまる/カトマンズの信号機は点灯していない/「生命の値段」はいくら?/ミニ・マイクロ発電/ネパールの電力を担う「ネパール電力公社」(NEA)/電力の需給バランスは悪化している/信頼される基底電源、カリガンダキ水力発電所/「トウデン」も話題に/貯水池や貯水式ダムの湖底堆積物が問題/アッパータマコシ水力発電プロジェクトとは/サービス内容に比べ電気料は高い
2.エネルギーは木材が頼り
庭の炎が暖房がわり/プロパンガスが使えない家庭は木材のみ/供給源の九八パーセントはバイオマスエネルギー/心配になる森林資源/割高な石油製品・エネルギー価格/伝統的なエネルギー循環、しかし女性の負担は大きい
3.女性差別は見過ごせない
ホテルの新築、増改築ラッシュ/工事方法は昔ながら/女性の肉体労働/女性の仕事は多い/海外労働からの引き上げは喫緊の課題/ネパール女性の海外労働は人身売買?/女性の海外労働を改善するには/いつも見かける出稼ぎ
第六章 発展の処方箋はどこに ─ 支援する現場の苦闘
1.支援は世界中から たくさんの人がネパールを支援
貧困率の改善も海外頼り/日本からの支援はJICAが主導/近藤亨さんのムスタン開発プロジェクト/たどりつくのも困難なムスタン地区/寒冷地で「果樹栽培」「稲作」「学校作り」など/人生をかけたプロジェクトの終了/継続が難しい開発プロジェクト/「ポカラ日本語&文化センター(PJLCC)」のプロジェクト/ブッダ移動図書館プロジェクト/支援の継続には困難がいっぱい/せっかくの支援もNGOの不正により人々に届かない/NGOの不正はいつもあること、でももっと追跡されても良いはずなのだが
2.ネパールが発展するには
途上国が経済発展するには八条件、ネパールにあてはめると/どうして貧しさから抜け出せないか、いつまでもLDCなのか!/国を頼るほど税金を納めているか?/脱税する意図はないのだが……/徴税の仕組みと実際
第七章 「段々畑」(テラス)で暮らす人の「幸福感」
テラスの生活はつらくない!?/懐かしい「素朴なたたずまい」/意識するから「幸福」/「欲求の五段階説」はあてはまらない/「グルカ兵」は家族のほこり/テラスに住むことは「幸せ」/満足している境遇はいつまで?/トレッキングのロッジでは6
あとがき
参考文献
著者略歴
-
蔵田 友義(くらた ともよし)
1947年 山口県佐波郡徳地町(現 山口市)生まれ。
1972年 東京都立大学(現 首都大学東京)工学部卒業。
日本経済新聞社入社。新聞製作システム・ネットワーク構築、
IT導入などのエンジニア、システム部門の管理を担当。
2002年 日経統合システム入社。システムセキュリティ担当など。
2009年 千駄ヶ谷日本語教育研究所。
2010年から、ネパールのポカラで日本語教育ボランティア教師。
電子情報通信学会終身会員。
HOME>ヒマラヤの麓で —定年後、日本語を教える—