HOME>スウェーデン王カール十一世の幻視について —奇譚迷宮の散策への誘い—
価格
2860円(税込)
ページ数
332ページ
発行日
2018年12月5日
ISBN
978-4-86265-695-7
スウェーデン王カール十一世の幻視について
—奇譚迷宮の散策への誘い—
佐藤恵三
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巷間で語りつづけられたこの謎めいた資料は事実なのか、またその真意は何であったのか、その問いに限りなく近づこうとする試み。
だが事はそんなに簡単ではない。なにしろ歴史的に実在した人物の体験物語でもあり、さらにはその体験が事実だったとの本人の署名までがなされている以上、そんなことが実際にあったかどうか、という問いに答える必要がある。偽作・偽書の疑問をもちながらも、この資料を残そうとした人間という生き物に迫る著者の推論は、読み手を新たな探索の道へといざなうのである。
目次
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初めに
カール十一世の幻視にまつわる物語
一、アルント(゠クライスト)のヴァージョンについて
二、ヴィリバルト・アレクシスのヴァージョンについて
三、テーオドーア・フォンターネのヴァージョンについて
四、プロスペル・メリメのヴァージョンについて
五、案内役の「カール十一世の幻視」の研究者の所論
六、カール十一世の妻、ウルリーカ・エレオノーレはゆかしき観音菩薩か
七、フォンターネの種本はクライストの「ベルリーン夕刊新聞」なり
八、「カール十一世の幻視」を扱ったほかの主な研究者について
別の視点からのこの「幻視」に対する否定の所論
「幻視」の文書が出まわったとされる時期以降の政権担当者の内情
一、ウルリーケ(カ)・エレオノーレ(ラ)とフレードゥリク(フリードリヒ)一世
二、アードルフ・フリードリヒ
三、余録―「三角帽」派と「キャップ」派の政争
四、グスタヴ三世の絶対君主制への志向と反対勢力の君主弑逆
五、余録―ハンス・アクセル・フォン・フェルセン
六、グスタヴ三世の最期
七、グスタフ四世アードルフの王位剥奪と悲劇的な彷徨
八、余録―クリスチャン・アウグスト・フォン・シュレースヴィヒ゠ホルシュタイン゠ゾンダーブルク゠アウグステンブルク
九、カール十三世の曖昧性と一種のハーレム形成
十、余録―カール十三世の情愛カルテ
十一、ヘートヴィヒ・エリーザベト・シャルロッテの強かでしなやかな人心操縦力
結論に向けての多面的な考察
一、「幻視」の文書の存在証明にあらずして非在証明なり
二、文書の内容のオカルト性は何を示すのだろうか
三、この「幻視」物語に隠されたその制作意図
四、物語の展開の仕方と物語の焦点の向け方との矛盾が顕わにしているものは何か
五、筆者の推論の傍証、レゥイテルホルム及びカール十三世に関する公式的な解説
補遺―Löwenhielm(レーヴェンイェルム)の問題
WikipediaによるGustaf Löwenhielmについての解説
後書き
著者略歴
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佐藤恵三(さとう・けいぞう)
弘前市に生まれる。
京都大学ドイツ語・ドイツ文学科修士課程修了。
京都産業大学名誉教授。
主要著書
『ドイツ・オカルト事典』同学社。
主要訳書
H. H. エーヴェルス『蜘蛛・ミイラの花嫁』創土社(共訳)
G. マイリンク『緑の顔』創土社
H. H. エーヴェルス『魔法使いの弟子」創土社
G. マイリンク『西の窓の天使』上、下 国書刊行会(共訳)
H. v. クライスト『クライスト全集』第一巻〜第四巻(別巻)沖積舎
など。
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