価格
2475円(税込)
ページ数
334ページ
発行日
2018年11月1日
ISBN
978-4-86265-702-2
奇跡にそっと手を伸ばす
ドーリス・デリエ 著/小川さくえ 訳
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親と子、男と女、あるいは既成の性といった問題を、今、この時代のなかで描くデリエ最高傑作。複数の語り手の声が渦巻く圧倒的迫力。
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60年代には、若者たちが海岸で暮らしながら自由な人生に憧れた、トレモリノスのヒッピーの夢がありました。そのうちの一人が主人公のイングリトです。彼女は、幼い娘のアップルとともに、社会の外で生きるつもりでした。そのあとイングリトとその娘になにが起きたのか。アップルは母親の自由にどう向き合ったのか。イングリトはどのようにして自分の生き方を貫くことができたのか。社会はイングリトのような人間たちにどう向き合ったのか。わたしたちはどこまで自由に生きることができるのか。誰がどんな代償を支払うのか。そして他の人びと、たとえばアフリカの過酷な生活から解放してくれるはずのヨーロッパの生活に憧れるアフリカ難民たちの夢はどうなっているのか。わたしたちは個人としてどこまで自由でありうるのか、そしてどこまで適応しなければならないのか。
これらすべての問いがわたしの心を占めています。それらの問いが、同じように読者のみなさんの心を動かしてくれることを願っています。(「日本の読者への著者の言葉」)
著者略歴
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ドーリス・デリエ(Doris Dörrie)
1955年ハノーファー生まれ。作家、映画監督。
映画:『フクシマ、モナムール』(2016年)、『ハナミ』(2008年)、『モンゼン』(1999年)、『愛され作戦』(1995年)、『メン』(1985年)他多数。
邦訳:長篇小説『サンサーラ』(同学社、2016年)、短篇集『あたし、きれい?』(集英社、1997年)、短篇集『素敵な男性と知り合うには』(太陽出版、1992年)他。
訳者略歴
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小川さくえ(おがわ・さくえ)
1951年長崎県生まれ。専門はドイツ語圏の文学、ジェンダー論。
宮崎大学名誉教授。
著書:『オリエンタリズムとジェンダー~「蝶々夫人」の系譜』(法政大学出版局、2007年)
訳書:D. デリエ『サンサーラ』(同学社、2016年)、W. シヴェルブシュ『光と影のドラマトゥルギー』(法政大学出版局、1997年)、C. v. リンネ『神罰』(法政大学出版局、1995年)、W. レペニース『十八世紀の文人科学者たち』(法政大学出版局、1992年)、W. シヴェルブシュ『闇をひらく光』(法政大学出版局、1988年)他。