
価格
1980円(税込)
ページ数
230ページ
発行日
2020年5月30日
ISBN
978-4-86265-806-7
マスコミ掲載・書評
中日新聞で紹介

湿った時間
宇佐美宏子
- 妖しい色の12の世界
緑色がかった薄青の絹のショールをふわりと掛け、うなじにかかったほつれ毛を白い指でかきあげていた伯母の琴乃を思い出した時、笙子は伯父の膝にのせられてた小学校5年の自分をも思い出していた。両手が笙子の腹部で組み合わされていて、お尻をわずかに動かすと、伯父の太股がびくんとした。今は分らないでもそのうち分る。肉桂(にっけい)や伽羅(きゃら)の香木で染めた掛け襟は香色(こういろ)、でもちょっと焦げた色が加わると誰かに恋焦がれている焦香(こがれこう)。そして吐息は「秘色(ひそく)」。
すべての色には名前と女の性(さが)、そして人生がある。小気味よい文体で紡ぎだした佳作集。
(中部ペンクラブ会長・三田村博史)
目次
- 湿った時間
淫 雨
秘 色
春の泥
赤い財布
刺青偶奇
闇の色
アナザー・ローズ
炎の残像
紅蓮の街
鯖 雲
象のいた森
著者略歴
- 宇佐美宏子(うさみ ひろこ)
1940年 徳島県徳島市に生まれる
1980年 眼科医の夫と名古屋市へ 名古屋駅前で開業
1987〜1991年 「作家」同人
1993〜2012年 「カプリチオ同人」
2015年〜 「海」同人
中部ペンクラブ会員
愛知県芸術文化協会会員
宇佐美眼科事務長
著書『情念川』『秘色』『裸身』