空白の絵本 —語り部の少年たち—
司 修
- 広島への原爆投下による孤児、そして「幽霊戸籍」
約30年前「幽霊戸籍」をテーマに放映されたNHKドラマ《空白の絵本》を、本書では、ヒロシマに生きた少年少女たちの詩や言葉をそのまま引用し、平和への願いを小説として新たに描く。
- 死んどるのに死んどらん人たち
- 広島をテーマに、ずっと絵を描いて来たんですけれど、広島へ行って取材しても、絵を描くためのイメージをつかむのは難しかったのです。ところが、シナリオのための取材である人から聞いた〈幽霊戸籍〉という言葉は、体中、冷たい風が吹き抜けました。その意味は恐ろしく、背筋が寒くなりました。戸籍上まだ生きているのですが、実際には死亡しているか、行方不明になっているらしいんですね、戸籍上。その人の生年月日から百年か百十年経つと抹消されるらしいのですが。(「ドラマ版」冒頭の著者の発言より)
目次
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空白の絵本
幸福のはずかしさ
死者の声
もののけの宿
『この世界の片隅で』を読む
参考資料
著者略歴
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司 修(つかさ・おさむ)
1936年生まれ。画家、小説家。法政大学名誉教授。
中学卒業後、独学で絵を学び、絵画や版画をはじめ、絵本、書籍の装丁、挿絵など多岐にわたる作品を発表。また小説やエッセイ、脚本など文筆分野での活躍でも知られる。
1978年『はなのゆびわ』で小学館絵画賞受賞。 1993年 「犬」で 川端康成文学賞、 2006年 『ブロンズの地中海』で毎日芸術賞、2011年『本の魔法』で大佛次郎賞受賞。 2016年イーハトーブ賞受賞。
展覧会
1986年『司修の世界』(池田20世紀美術館)
2011年『司修のえものがたり──絵本原画の世界』(群馬県立近代美術館)
絵本
『河原にできた中世の町』(文・網野善彦、岩波書店、産経児童出版文化賞)
『まちんと』(文・松谷みよ子、偕成社、1984年ボローニァ児童図書展・グラフィック推薦、1989年ライプチヒ国際図書デザイン展・金賞)
『セロ弾きのゴーシュ』(文・宮澤賢治、ラボ教育センター)
『100万羽のハト』(作・絵 司修、偕成社)
『ぼくはひとりぼっちじゃない』(作・絵 司修、理論社)
小説
『幽霊さん』(ぷねうま舎)
『戦争と美術』(岩波新書)
2017年 1月より現在まで『図書』(岩波書店)の表紙絵と「夢」の連載中。