紅色のあじさい 津村節子 自選作品集
津村節子
-
語る喜び
自然で無理のない文章から物語の喜びと呼びたくなるリズムが聞こえてくる。透明な結晶の奥底のほうから紅色の光が暖かくさしてくるその文章を読んでいると、積み重ねられた歳月の襞が揺蕩いながら読者の気持ちを包み込み、眼前に景色を広げてくれる。得難い華やかさがある。それでいて大切な事実や事象は几帳面に書き留められごまかしがない。
津村節子自選作品集「紅色のあじさい」を読みながら、多くの作家が競い合った文業華やかな時代へと誘われた。(小説家、法政大学教授 中沢けい)
-
「季刊文科」誌に掲載されたエッセイを中心に、夫・吉村昭の没後に追悼企画として収録された大河内昭爾との対談、自身の半生を語った中沢けいとの対談を収録した作品集。
目次
-
あの頃
火事明り
二人の智恵子
遊園地
未練の一作
追悼「吉村昭」対談 津村節子× 大河内昭爾
弔辞 大河内昭爾
女流文学者会の終焉
二本の歯ブラシ
青葉の季節
活字と映像
再 会
ベッドの物入れ
はいれない店
変わった人種
戦艦ミズーリーと、武蔵
観光地のあり方
海に流した手紙
しあわせ ベンチ
見えなくなった影
紅色のあじさい
片眼の世界
二人旅
長い道のり
延 命
偲ぶ会
八十六さいの高校一年生
飛脚の末裔
移り征く年月
井の頭池かいぼり
ひとりごと
忘れられない店
飛脚の失意
津村節子の時代 対談 津村節子× 中沢けい
追悼・瀬戸内寂聴 必死だったあの時代
あとがき
初出一覧
著者略歴
-
津村節子(つむら せつこ)
1928年 福井市生まれ。
学習院短期大学国文科卒。
1953年 吉村昭と結婚。
1964年 「さい果て」新潮社同人雑誌賞受賞。
1965年 「玩具」芥川賞受賞。
1990年 『流星雨』女流文学賞受賞。
1998年 『智恵子飛ぶ』芸術選奨文部大臣賞受賞。
2003年 恩賜賞・日本芸術院賞受賞。
2011年 「異郷」川端康成文学賞、『紅梅』菊池寛賞受賞。
日本芸術院会員。
主な作品
『重い歳月』『冬の虹』『海鳴』『炎の舞い』『黒い潮』『星祭りの町』『土恋』『三陸の海』等。
2005年『津村節子自選作品集』(全6巻)刊行。