
HOME>生きられた言葉
生きられた言葉 ラインホルト・シュナイダーの生涯と作品
下村喜八
- シュヴァイツァーと共に20世紀の良心と称えられたラインホルト・シュナイダーは、わが国ではほとんど知られることがなかった。本書はその生涯と思想を初めて本格的に紹介するだけでなく、闇の時代にあって真実を希求し、虚無の中にあって光に向かう意味を問う稀有の書である。
- シュナイダーは1903年に南ドイツに生まれ1958年に亡くなった詩人であり、歴史家、そして思想家である。ナチスの時代における、キリスト教徒の反ナチ、反ファシズム抵抗文学者の代表的人物として有名である。第二次世界大戦中、彼の存在は伝説めいてくることもあった。「彼が生きている限り、ドイツは滅びない」。「彼がこの町に住んでいるから、この町は爆撃されることはない」と信じた人もいたと言われている。またある人は「シュナイダーが生きている限りドイツは良心をもっている」と言った。 (本文より)
目次
-
序
序章 ラインホルト・シュナイダーと病気
はじめに
一 生の無意味
二 理不尽な苦悩
三 心の病
四 肉体の病
五 アドベントとしての生
第一章 没落の時代の詩人──シュナイダーとカモンイス──
一 没落の内なる詩人
二 憂鬱の遺産
三 死への憧憬
四 自己の存在証明
五 『カモンイスの苦悩』の成立と当時の評価
六 過去と現在の同一化
七 ポルトガルの没落とカモンイスの生涯
八 没落の克服
第二章 『カール五世の前に立つラス・カサス』における虚構された二人の人物
一 第二次世界大戦中のシュナイダー
二 『カール五世の前に立つラス・カサス』
三 ベルナルディーノ
四 二重構造
五 ルカーヤ
第三章 ただ真理の声で私はありたい──ナチス時代におけるシュナイダーの発言──
一 真理の声
二 歴史のなかの神の国
三 キリスト者の生とその使命
四 時代批判
五 赤裸々な十字架
第四章 歴史のなかの預言者的実存──シュナイダーとエレミヤ──
一 預言者的詩人
二 歴史のなかで真理を語る
三 言葉は出来事となる
四 真理は彼らの目を開けた
五 心の転換を促す
六 仲介者
七 共に苦しむ人
八 苦悩する神の認識
九 神と共なる生涯
第五章 シュナイダーの平和思想
一 第二次世界大戦後のシュナイダー
二 ラインホルト・シュナイダー事件
三 シュナイダーの平和思想
四 シュナイダーの平和思想についての評価
第六章 『大いなる断念』──政治と宗教の悲劇的葛藤──
一 『大いなる断念』
二 作品の素材とあらすじ
三 時代
四 ケレスティヌスとボニファティウス
五 権力と罪責
六 羊を養う仕事としての権力の行使
七 断念
第七章 キリスト教は悲劇か──晩年のシュナイダーの悲劇的キリスト教──
一 悲劇
二 非悲劇的キリスト教信仰
三 悲劇的キリスト教信仰
第八章 破壊された神の顔──『ヴィーンの冬』における宇宙と生物──
一 『ヴィーンの冬』
二 末期の眼
三 宇宙の沈黙
四 生物の世界
第九章 シュナイダーとヴィーン、そしてオーストリア
一 ヴィーン
二 歴史と出会う 時代と出会う
三 帝国
四 二人のルドルフ
五 ハプスブルク家の支配
六 オーストリア 過去と現在
第一〇章 『ヴィーンの冬』における瀕死の神
一 懐疑
二 信仰と懐疑
三 成人の信仰
四 神の像
五 十字架の神学
六 無力な神
七 瀕死の神
八 希望・約束
第一一章(付録) ディートリヒ・ボンヘッファーの『抵抗と信従』試論
一 ヒューマン・ドキュメント
二 「成人した人間」と「作業仮説としての神」
三 宗教と信仰
四 キリストに啓示された神
註
あとがき
主要参考文献
著者略歴
-
下村喜八(しもむら きはち)
1942年、奈良県に生まれる。
1970年、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。
現在 京都外国語大学外国語学部教授。京都府立大学名誉教授。
主な論文:
「『親和力』と『色彩論』」
「ゲーテの『タッソー』における内なる分裂」
「ラインホルト・シュナイダーの『カモンイスの苦悩』」
「破壊された神の像─ラインホルト・シュナイダーの『ヴィーンの冬』」
翻訳:
ラインホルト・シュナイダー『カール五世の前に立つラス・カサス』(未来社、1993年)
『ブルンナー著作集 第7・8巻 フラウミュンスター説教集Ⅰ・Ⅱ』(教文館、1996年)

HOME>生きられた言葉