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根本思想を骨抜きにした『ツァラトゥストラ』翻訳史
—並びに、それに関わる日本近代文学
小山修一
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ニーチェの命の翻訳はー日本近代文学の死角
『ツァラトゥストラ』の目的は、読者に健やかな喜びを極めさせることにある。だが「没落」という言葉の意図的な乱用によって、その根本思想は骨抜きにされてきた。その換骨奪胎の歴史を辿ってみると、復古の闇が見えてくる。
序章から二章は背景。三章は本論! 四章から六章は再び背景、或いは樗牛オールドファンへの贈物。七章の「漱石と長江」は斬新そのもの、日本近代文学の最大の死角を抉り出しているのではないか。八章から十章は本丸本論!! とにかく、鴎外や啄木をはじめ、平塚らいてう、更には原節子に到るまで興味津津のテーマが満載!
目次
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序章 『悦ばしき知識』第二版の為の「序文」一は何を問うているのか
第一章 根本思想の謎
I 超人
II 犬と猫の違い
III 愛と永遠回帰
IV 根本思想を象徴する太陽
第二章 根本思想をめぐる〝蜘蛛の網〟としてのハイデッガー
第三章 根本思想の掏り替えを狙った安倍能成訳『この人を見よ』に続く翻訳史
I 奇妙な横並び
II 呪いの永遠回帰
III 「深淵の思想」との対決
IV 根本思想を掏り替える人の群れ
V ニーチェに対して正直な生田長江と加藤一夫
特記:加藤一夫訳『この人を見よ』
第四章 ニーチェと高山樗牛と生田長江を結ぶ「美的生活を論ず」
I 「長江」命名の経緯
II 文壇から理解されなかった預言「美的生活を論ず」
III もう一方の秤皿の「無道徳」
IV ニーチェと樗牛との秤皿構造の外形比較
V 本能の絶対的価値
VI 預言者祖国に受容れられず
VII 「美的生活を論ず」から日蓮へ
第五章 ニーチェと「美的生活を論ず」との関係を否定する見解について
I 願望を事実として言い替える
II 見当外れの過大評価
III 近松論の逆説
IV なぜ五節までを切り捨てたか
V 谷沢の掏り替え
VI 改竄
VII 排除のロジック一辺倒の重松
VIII 重松流の掏り替え
IX ドイツ・ロマン主義を日本浪漫主義に掏り替える重松と谷沢
X 「無題録」(六)に於ける樗牛の真意
XI 「末人」・吉田精一
XII 曲学阿世の和辻哲郎著 『ニイチェ研究』
第六章 自然主義と『ツァラトゥストラ』の根本思想の起源
I 謎の多い石川啄木の「時代閉塞の現状」
II 樗牛と啄木の比較
III 樗牛の天才性について
IV 本来の自然主義と日本の擬自然主義
V 「自然主義」に睨みを利かす鷗外
VI ツァラトゥストラの根本思想の起源
漱石没後百年追悼、長江没後八十年追悼、平塚らいてう没後四十五年追悼
第七章 漱石と長江
I 森田草平という道化
II 那須塩原心中未遂事件
III 『三四郎』は漱石から明への恋文
IV 『煤烟』をめぐる漱石と平塚家の遣り取りについて
V 長江の『煤煙』批評と平塚明の「小説に描かれたるモデルの感想」について
VI 「吾輩は猫である」は何のパロディーであるか
VII 「超人」並びに「永遠回帰」の応用問題としての塩原心中未遂事件
VIII 本邦初の全訳『ツァラトゥストラ』をめぐる漱石の思惑
IX 明治四十三年(一九一〇)
X 「夏目漱石氏と森鷗外氏」
XI 『こころ』の背景(1)
阿部次郎著『ニイチェのツァラツストラ解釈並びに批評』
XII 『こころ』の背景(2)『自叙伝』(3)『青鞜』創刊
XIII 『こころ』の背景(4)「夏目漱石氏を論ず」
XIV 『こころ』の背景(5)『行人』
XV 『こころ』一 罪の意識
XVI 『こころ』二 読み替えられた掛け声としての「覚悟」
XVII 『こころ』三 重力の魔と影
XVIII 『こころ』四 永遠回帰への殺意
再び 『ニイチェのツァラツストラ解釈並びに批評』について
第八章 生田長江訳における根本思想の暗殺
I 樗牛の「海の文藝」からのアプローチ
II パロディーの始まり
III 四十七番目の詩の謎と、長江訳『悦ばしき知識』第四書三四二訳の不思議な括弧
IV 単行本訳に対する抵抗としての全集訳
V ニーチェ「たばかりList」の一端
VI ニーチェ「たばかり」の全体像
VII 二つの「没落」の謎
VIII 復讐の狂気
第九章 『ツァラトゥストラ』〈序説1〉第八連を中心とする翻訳史
I 長江以前
II 長江訳評
III 大正期
IV 昭和期(一九四四年まで)
V 戦後
VI 手塚富雄の土井虎賀寿訳批判
原節子没後一年追悼
第十章 「安城家の舞踏会」と『ツァラトゥストラ』の「没落」
I 日本のグレートゥヒェン原節子
II 「没落」の延命
注 解
あとがき
著者略歴
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小山修一(こやま・しゅういち、本名・今井修一)
1948年 福岡県生まれ。
中央大学大学院文学研究科独文専攻博士後期課程修了。
1989年4月から2012年3月まで石巻専修大学経営学部准教授。
元『文芸東北』同人
著書
詩集『黄金のひみつ』(鳥影社 2001)
詩集『韓国の星、李秀賢君に捧ぐ』(文芸東北新社 2008)
『「ツァラトゥストラ」入門』(郁文堂 2005)
『ニーチェ「ツァラトゥストラ」を少し深読みするための十五章』(鳥影社 2013)
訳書
『ツァラトゥストラ』上(鳥影社 2002)
『ツァラトゥストラ』下(鳥影社 2003)
『黄金の星はこう語った』上(鳥影社 2011)
『黄金の星はこう語った』下(鳥影社 2011)
『2018改訂 黄金の星はこう語った」(鳥影社 2018) ※訳書の原典は、いずれもAlso Sprach Zarathustra
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