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価格
1760円(税込)ページ数
368ページ発行日
2019年3月28日ISBN
978-4-86265-737-4マスコミ掲載・書評
長野日報で紹介
岡谷製糸王国記 信州の寒村に起きた奇跡
市川一雄
- 市川一雄著『四王湖岸』も好評発売中
- 富岡ではなく岡谷がなぜ繁栄?
諏訪式機械と諏訪式経営、工女たちの奮闘と片倉四兄弟ほか製糸に生きた人たちの群像等情報満載!
糸都の諸相を生き生きと描く。 -
生産の主役「工女ファースト」が製糸の実像
難しい繰糸の作業をこなし、12歳で自立していった工女たち。
製糸勤めの記念にそろって金歯、宵宮に躍る男装工女のひと群れ…… 女工哀史をくつがえす、青春を生きた工女たちの姿がここに!
目次
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はじめに
第一章 重荷を背負った製糸業 ―製糸家と工女の苦闘
生産原価の八割が繭代―製糸業の特殊性/「生死業」/「女工」でなくて「工女」/工女の技が経営を左右/「十四中」/明治の初めからきびしい品質管理/長時間労働に耐えた工女たち/繰糸の三方式/洋式繰糸機あれこれ/諏訪式繰糸(経営)
第二章 スタートから先頭に立つ ―明治・諏訪人の智恵と勉励
幕末諏訪に製糸の基盤/ご一新、生糸で国おこし/官営富岡製糸場開業/イタリア式製糸場が先行/諏訪製糸の原点・深山田製糸場/一年半で挫折/官営富岡製糸場始末/全国に器械製糸場/す早い諏訪製糸の起ち上がり/緻密な製糸経営/北信に富岡モデルの六工社/武居代次郎の「中山社」と諏訪式繰糸機/大形稲妻型ケンネルを考案/諏訪盆地に続々と器械製糸所/明治十年、平野村に三〇工場/製糸王となる片倉兼太郎の登場/「地主」の境涯をきらった兼太郎/家族総がかりの「生産者的経営者」/家内工業的な温かさ残す/傑出した片倉四兄弟/私立片倉尋常小学校/隠れた援助/孝心/製糸結社―共同出荷の時代/開明社、規範となる経営/繰糸鍋いろいろ/信州製糸が生産額全国一位に/共同揚げ返し(再繰)へ/輸出戦略で先見の明―いち早く対米輸出に転換/片倉の経営危機と第十九銀行/生糸品質の完全な統一―開明社方式/「罰金」の「罰」は×(バツ)のこと/片倉が松本へ進出―大発展の始まり/英才今井五介/傑物小口善重と小口組/山十組の驚異的な大膨張/釜口水門周辺の美景、製糸の残映と小口太郎/製糸家の運動で岡谷に郵便電話局/勤倹努力の製糸家と、金唐紙の邸宅残した製糸家と/鉄工所ができ、繭倉建設も本格化/第十九銀行の製糸金融/富岡製糸場払い下げ入札に片倉が一番札/スチームインジン/木造で六層、吉田館の繭倉/川岸村に日本最大の製糸場「三全社」/工女の奪い合い/「組」の誕生と片倉同族会/旧片倉組本部事務所/国立生糸検査所できる―きびしい品位検査/製糸機械メーカー生まれる/里山は丸坊主、西条炭移入に鉄索/「信州上一番」/良繭もとめて県外へ工場展開/この国の近代化支えた製糸業/製糸同盟が職工の登録制/米国絹業協会の要求に果てしない技術改善/鉄道網つながり地理的優位性/谷間の村のシルクラッシュ/優良糸生産への転換点―明治四十年/近代的繭倉庫群が出現―入二諏訪倉庫㈱設立/製糸王が現場監督/日本三大製糸が岡谷に/名門諏訪蚕糸学校の誕生/製糸工場の「岡谷式普請」/糸取りの現場―工女の話の聞き書きから
第三章 糸価絶頂 ―古きよき時代・大正
水車・蒸気動力から電力ヘ/今井五介と一代交雑蚕種/諏訪の蚕種業/伊那に養蚕家の組合製糸龍水社/丸山タンク/岡谷地方が日本一の製糸業地帯に/煮・繰分業―四条繰りへ/繭の特約取引と養蚕の近代化/製糸場の汽笛/村の正月/製糸業の絶頂期と戦後景気/大正モダニズムの華―武井武雄が登場/「生糸・養蚕の文化」/岡谷・諏訪地方の製糸工場二八二/工女の集団帰郷で鉄道が大混乱/帰郷する工女たちの晴れ姿/日米絹業界の交流と今井五介の炯眼/米絹業協会視察団の素っ気ない対応/工女が賃上げ求め就業拒否/工女さまさま―監督の日記から/工女の娯楽とスポーツ/糸価史上最高値、そして暴落……/糸の町の変転/「工女ファースト」の家憲/製糸家の家族の暮らし/ボイラー掃除の少年が博士になって人工呼吸器発明/十二歳で独り立ちしていった養成工女たち/片倉組が株式会社に脱皮/絹のストッキング―求められた高格糸/ようやく労働時間短縮/半沈式煮繭機が登場し煮・繰分業が本格化/小豆ほどの空気を……煮繭の難しさ/工女争奪さらに激化/見番も楽ではない役目/賃金算出法を明示/多条繰糸機登場―高級糸の量産時代へ/糸価続落、業界に憂色/人造絹糸進出の脅威/大震災、不況の中で片倉がニューヨークに駐在所/五条取りへ/セリプレーン検査器が登場/製糸同盟が古村青年を欧米調査へ派遣/永田鉄山秘話/「世界一の製糸集落」/国用製糸の町/男装して踊る工女のひと群れが……/糸挽き唄の源流は飛騨の炭焼き唄/盆踊り、大正の終わりとともに衰微
第四章 激動の昭和 ―世界大恐慌と戦争と
昏い昭和の幕開け/製糸王国にしのび寄る影……糸都にはなお熱気/山一林組争議/争議の再検討/糸都震わせたスリバン/「母の家」/御法川多条繰糸機と「ミノリカワ・ロウ・シルク」/セリプレーン検査時代に/賃金もセリプレーン採点制に/繰糸法も一変/岡谷に乾繭取引所できる/片倉館―製糸王国時代の記念的建物/物見遊山ではなかった二代兼太郎の外遊/諏訪大社秋宮の外苑「山王台」を復活させた「二代さん」/片倉歴代社長の勉励/岡谷聖バルナバ教会、畳敷きの教会堂/製糸王国、岡谷地方に二一四工場/村内に五〇〇釜以上の個人経営製糸が八社/シルクの街の賑わい/村内に五五〇店/製糸で働いた記念に伊達金歯/元気だった工女たち/水色のバス/ローマ字で日記書く工女/飛騨から来た元工女が市議に/バレエ踊る工女、諏訪響の前身も誕生/工女の諏訪土産/煙突女学校/「南京錠で工女を監禁! 」/太鼓判‼……片倉の門番のことば/製糸工場の食事/「工女哀史」のこと/「百年統計でも大きな赤字企業」/「哀史」への反論/野麦峠の映画/自分で稼いでいる工女の誇り/『製糸女工虐待史』のこと/「『女工哀史』言説についてのもう一つの視点」/工女たちの語り口の面白さ/工女と映画/歪められたイメージ「哀史」/片倉コンツェルン/世界大恐慌/糸価大暴落/工女の出身地/工女の賃金/工女賃金の査定法/諏訪湖「黄濁」生糸に悪影響/賃金査定の「罰金制」廃止/新賃金算出法/大恐慌で賃金二割カット/製糸危機―新タイプの丸興製糸㈱設立めぐるドラマ/佐一翁の小野ことばと母ひろ子/ひろがる社会不安……小口組解散/国直轄の失業救済事業/強制検査で等級格付け/ついに山十組倒産 銀行も日銀へ特別融通願い出/失業対策事業で釜口水門できる/恐慌下で多条機へ転換/落日/もと工女さんの自分史の本から/特3A格生糸は片倉・郡是の独占状態に/組合立岡谷生糸検査所できる/平野村が岡谷市に―糸都に危機感/ナイロン出現、大戦への道/太平洋戦争開戦、自動繰糸機の開発中断/戦時体制、製糸工場が軍需工場に/敗戦―滞荷生糸が飢餓の国民救う/製糸復興と変容/日本経済は高度成長したが……/業者の熱意で蚕糸試験場誘致/寄付金で蚕糸博物館/信州味噌の本場に/自動繰糸機に到達/瀬木秀保とHR―3型機/蚕糸薬剤と「生糸の神秘」「謎の光沢」/製糸に早くから薬剤/工業で難易度最高クラスの製糸/平成まで残った最後のざそう機専用製糸所/ペニー製造工場も/苦闘の歴史/製糸から精密工業へ/糸都に光 シルクに新たな可能性/世界一の「シルクファクトおかや」市立蚕糸博物館/糸都岡谷を再訪する高齢の元工女たち
おわりに
(資 料)
【近代化産業遺産群】平成十九年経済産業省指定/【岡谷市蚕糸博物館所蔵 日本機械学会「機械遺産」認定の繰糸機群】/初代片倉兼太郎の言葉/片倉同族家譜/山十組山八製糸所工場見取図/生糸格付表/主な参考文献
著者略歴
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市川一雄(いちかわ かずお)
昭和10年(1935) 下諏訪町生。県立諏訪清陵高等学校卒。
作家・編集者。地域紙「湖国新聞」編集長を経て、編集工房「草原社」「あざみ書房」を設立し、今井久雄著『村の歳時記』全四巻、小松茂勝著『諏訪湖の恵み』など地方文献を出版。
著書に小説『四王湖岸』(鳥影社)、『と川子別れ』(鳥影社、刊行予定)、『と川石人譚』(草風社)、評伝『すわ人物風土記』(信州風樹文庫ふうじゅの会)、ノンフィクション『すわ湖の町の平成元年』(あざみ書房)、嶋崎昭典らとの共著『諏訪大紀行』(一草舎)、宮坂光昭らとの共著『諏訪大社の御柱と年中行事』(郷土出版社)、宮坂五郎との共著『戦争が消した〝諏訪震度6〟』(信濃毎日新聞社)など。
諏訪こぶしの会(新田次郎顕彰会)会長、ふるさとの製糸を考える会副会長を勤めた。
諏訪市文化財専門審議委員、下諏訪町文化財専門委員。
文芸誌『窓』編集発行人。
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