価格
2640円(税込)
ページ数
412ページ
発行日
2017年1月20日
ISBN
978-4-86265-646-9
書評
毎日新聞で紹介
図書新聞で紹介
もっと、海を ─想起のパサージュ
イルマ・ラクーザ 著
新本史斉 訳
- イルマ・ラクーザ氏、クライスト賞を受賞
- 国境を越え、言語の境界を越え、移動し続けるラクーザの文学は、世界を撫で、小石のように硬く、すきま風のように軽やかで、ブラインドから漏れる光のように揺らめく言葉で、われわれを「もっと先へ」と導く。
多和田葉子の推薦エッセイ収録
- 揺れにまかせてもっと先へ
- 多和田葉子—
寝床に横たわって遠くを走る列車の音を聞いている方が、見知らぬ人たちといっしょに列車に揺られて国境を越え、夜に突入していく時よりずっと不安なことがある。それならばわたしたちも揺られてみようではないか。言葉の夜行列車に乗って揺られていけば、それが海の波の揺れになり、遠い記憶の中のゆりかごの揺れになり、詩的陶酔となって、読者をどこまでも連れて行ってくれる。
目次
-
第一章 父は何者?
第二章 ヴィルナまで
第三章 もう一つの記憶
第四章 欠けている記憶
第五章 今日、在るもの(とぎれとぎれの静物画)
第六章 トランクとはいったい何なのか?
第七章 ブダペシュト(リミックス版)
第八章 庭、列車たち
第九章 海辺で
第一〇章 アメリア
第一一章 おひるね部屋
第一二章 街の情景さまざま
第一三章 ミシおじさん
第一四章 色さまざま
第一五章 国境
第一六章 明るい挿話
第一七章 影
第一八章 ブラインドへの郷愁
第一九章 雪を抜けて
第二〇章 橇、斜面
第二一章 お人形のシャーリ、お人形のリシ
第二二章 弟が病気だ
第二三章 孤独の洗礼
第二四章 我読む、ゆえに我在り
第二五章 締めつけ、見せかけ
第二六章 音楽
第二七章 キス
第二八章 地図帳
第二九章 待つ喜び
第三〇章 メモ、リスト
第三一章 砂
第三二章 砂、産土
第三三章 奇妙
第三四章 引っ越し
第三五章 S氏
第三六章 ドストエフスキー
第三七章 犬と狼のあいだ
第三八章 もう悪ふざけは終わり、もっと音楽を
第三九章 ヤヌシュ
第四〇章 早春、いま
第四一章 クララ・ハスキル
第四二章 奇癖
第四三章 お手本
第四四章 膝丈ソックスの幸せ
第四五章 復活祭
第四六章 わたしたちは歓迎されていない
第四七章 ノイジードラー湖畔で
第四八章 十四歳の頃は、どうだったのか
第四九章 どうか、もっと亀裂を
第五〇章 寡黙な女
第五一章 デデク
第五二章 眠っている女たち
第五三章 パリ、ケ・デュ・マルシェ・ヌフ通り六番地
第五四章 通り、教会
第五五章 オルガン奏者
第五六章 プラハ
第五七章 聖金曜日の間奏曲
第五八章 ロシアでの日々また日々。旅
第五九章 シェフチェンコ通り二五番地の二
第六〇章 図書館にて
第六一章 アレクセイとのコンサート
第六二章 LL、あるいは、レーナよ、永遠に
第六三章 季節
第六四章 覚書
第六五章 お別れは無しで
第六六章 恋しさについて
第六七章 蒐集について
第六八章 忘却について
第六九章 風
海を想う/多和田葉子
訳者あとがき
著者略歴
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イルマ・ラクーザ(Ilma Rakusa)
1946年チェコスロヴァキア(現在はスロヴァキア領)リマフスカー・ソボタ生まれ。作家、翻訳者、文学研究者、文芸批評家として活躍。シャミッソー賞、ベルリン文学賞などを受賞。現在、チューリッヒに在住。
著書・編著:『ヨーロッパは書く』(鳥影社、2008年)、『ラングザマー—世界文学をたどる旅』(共和国、2016年)、「歩く」(『氷河の滴—現代スイス女性作家作品集』所収、2007、以上鳥影社)他。
訳者略歴
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新本史斉(にいもと・ふみなり)
1964年広島県生まれ。専門はドイツ語圏近・現代文学。
現在、津田塾大学教授。
訳書:『ローベルト・ヴァルザー作品集』1巻、4巻、5巻(鳥影社、2010年、2012年、2015年)、イルマ・ラクーザ他編『ヨーロッパを書く』(鳥影社、2008年、共訳)、ペーター・ウッツ『別の言葉で言えば』(鳥影社、2011年)他。