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眠る邪馬台国 飯野布志夫 著作集4
飯野布志夫
- 「魏志倭人伝」に記された道程・方位を記述の通りに追うと北九州、近畿のいずれにもたどり着かない。だが読み解けない地名や役名などを南九州方言で読むと邪馬台国が南薩摩に存在したことが立証できる。さらに「倭人伝」の風俗・産物などの記述と、「古事記」に通底する神代南薩摩の伝承を重ねると、驚くべき邪馬台国の姿が浮かび上がってくる。
- 邪馬台国は南薩摩にあった
- ……この事実は、倭人伝が伝えた『邪馬台国』の場所と、記紀が伝える天若日子が住み着いた神代王国の一つである『中津国』のあった場所と、南薩摩の門村に伝えられてきた「川借りの民俗」の三つの間には深い?がりがあったということを裏付けているのではないだろうか。(本文より)
目次
- はじめに
『魏志倭人伝』日本語訳文(中国語南音による)
第一章 邪馬台国の影が南薩摩に見える
(1)倭人伝解釈に対する疑惑
(2)倭人伝の書式は中国語の北音か南音か?
(3)中国語南音と南九語
(4)邪馬台国の読み方
(5)ヤマという言葉遣い
(6)ヤマトという国名
第二章 邪馬台国への道 道程と方位
(1)倭人は帯方の東南の大海の中に在り、
(2)山島に依って国や邑(むら)を為している。
(3)旧くは百余国があって、漢の時代には朝見者もあった。
(4)海岸に従って水行(船)で、韓国を歴し、
先に南へ向かいながら後には東に向かいながら(乍南乍東)して、
その北岸の狗邪韓国に到着する。
(5)対海国(対馬国に比定)に至る。そこの大官を卑狗といい、
《南九語 蛙の語例》
(6)副を卑奴母離という。
(7)また南へ、海ひとつ千余里を渡ると、海の名は瀚海といい、
一支(壱岐)国に至る。
(8)また海ひとつを渡り、千余里で末盧国(松浦)に至る。
(9)山海の浜に居住している。草木がさかえ茂り、
行くのに前の人が見えない。好んで魚や鰒(あわび)を捕り………
(10)【末盧国から】東南へ陸行五百里で、伊都国に到着する。
(11)官を爾支といい、副を泄謨觚と柄渠觚という。
(12)【伊都国から】東南へ百里で奴国に至る。
(13)官を?馬觚といい、副を卑奴母離という。
(14)東へ行って不弥国まで百里で至る。
(15)官を多模といい、副を卑奴母離という。
(16)南の投馬国に至るには、水行で二十日である。
(17)官は弥弥といい、副を弥弥那利という。
(18)女王が都を置く所の、南の邪馬臺国(臺は旧字、台とも書く)
に至るには、水行では十日、陸行では一カ月である。
(19)官には伊支馬があり、次は弥馬升といい、次に弥馬穫支といい、
次を奴佳?という。
《閉鎖・促音転化発声の語例》
《南九語 稜威(イッ)の語例》
(20)(女王国より北の国………)
次に斯馬国があり、次に己百支国、次に伊邪国、次に都支国、
次に弥奴国、次に好古都国、次に不呼国、次に姐奴国、次に対蘇国、
次に蘇奴国、次に呼邑国、次に華奴蘇奴国、次に鬼国、次に為吾国、
次に鬼奴国、次に邪馬国、次に躬臣国、次に巴利国、次に支惟国、
次に鳥奴国、次に奴国。ここが女王の境界の尽きるところである。
(21)その南には狗奴国がある。男子を王と為して、
その官に狗古智卑狗あり。女王には服属していない。
(イ)狗奴国
《格助詞「之」を「ノ」と発音する語例》
《格助詞「之」を「ン」と撥音化する語例》
《最終音節の語尾ヌ音が撥音化する語例》
(ロ)狗古智卑狗
(22)帯方郡より女王国に至るまでは、一万二千余里である。
第三章 邪馬台国の風俗と産物
(23)男子は大小にかかわりなくみな鯨面文身
(顔や体に入れ墨)している。
(24)みな自らを大夫と称していた。
(25)いま倭の水人は好んで沈没して(水中に潜り)
魚や蛤(はまぐり)を捕っておるが、………
(26)【倭までの】道里を計ってみると、
会稽東冶の東に当たる方に違いない。
(27)禾稲(粟や稲)の種をまき、紵麻(大麻・からむし)を取り、
桑で蚕を飼い絹を紡ぎ、細紵(細い麻糸か)や?(絹糸)、
緜(ががいものような植物綿のことか)を作り出している。
(28)その地には牛・馬・虎・豹・羊・鵲(かささぎ)がいない。
(29)兵器には矛(ほこ)・楯(たて)・木弓を用いている。
木弓は下を短く上を長くし、竹の箭(矢)に鉄の鏃(やじり)や
或いは骨の鏃をつけている。
(30)【産物の】有無の共のところをあげれば?耳・朱崖と同じである。
(31)倭の地は温暖にして、冬も夏も生野菜を食い、みな徒跣(裸足)である。
(32)屋室(茅ぶきの家)があり、
父母兄弟は寝たり休んだりするところを異にしている。
(33)朱丹(赤土)を身体に塗っているが、……
(34)飲食には?豆(竹かご型の重)を用い、手で食っている。
(35)死人がでれば、棺はあるが槨はなく、土に封じて冢(塚)を作る。
死んだ日よりはじめて十日余り、喪に服して引きこもっている。
それにあたる期間は肉を食わず、喪主は哭泣し、
他の人は就きっきりで歌い舞い酒を飲む。葬がすめば、
家を挙げて水中(川)に詣でて澡浴(水で穢れおとし)をするが、
門村の葬式の風習
(イ)葬式の準備
(ロ)葬式の米搗き
(ハ)塚
(ニ)守屋(モィヤ)
(ホ)毒掃い(ドッバレ)
(ヘ)川借り(カワカィ)
(ト)古事記神代巻が伝える『川借り』
《古事記神代巻より天若日子の喪》抜粋
(36)これを持衰の行為と名づけている。
門村で見られる持衰に対比する風習
持衰について
(37)生口(奴隷)……
(38)【倭国は】真珠や青玉を産出する。その山には丹(かまつち)があり、
木には?(?は異字、ゆすらうめのことか)・杼(とち)・
豫樟(くすのき科か)・?(不明)・櫪(くぬぎ)・
投(または投とも読める、種は不明)・橿(ぶな科の樫か)・烏号(不明)・
楓香(かえでのことか)があり、竹には篠(しの竹)・
?(細長い竹、南九州地方で矢用に使ったカンチク竹というのがある)・
桃支(蓬莱竹とされるが、同南九州地方のキンチョク竹と思われる)がある。
薑(しょうが)・橘(原生みかん)・椒(さんしょう)・
?荷(みょうが)もあるが、もって滋味と為すことを知らない。
?猴(さる)や黒雉(黒きじ)もいる。
(39)その会合での着座や立ち居振る舞いなどについては、
父子や男女の区別はない。
(40)大人(年輩者ではなく、上級支配者)の敬われる所を見ていると、
ただ手を打って、もって跪拜(ひざまずいて拝礼)にあてている。
(41)その法を犯せば、軽い者は妻子を没収し、
重い者はその門戸(家柄)および宗族(氏族)を滅ぼされる。
身分の尊卑にはおのおのに序列の階差があり、
合い互いに臣服しあって充足している。
(42)対応(返事)の声は噫(もしくはアイ)といい、……
第四章 女王卑弥呼
(43)その国も、元はまた男子をもって王と為していたが、往きて七、八十年、
倭国乱れて、相攻撃征伐し合って歴年、
(44)ようやくにして一人の女子を共立して王にした。名を卑弥呼という。
鬼道を事とし、能く衆を惑わし、
(イ)『卑弥呼』の読み方
(ロ)『卑弥呼』を「ヒメホ」と読んで
(ハ)『卑弥呼』を「ヒメフ」と読んで
(ニ)南薩摩に伝わる伝説の女神
《ウヒィドン》の伝説
(ホ)『卑弥呼』と『ウヒィドン』の関係
(ヘ)『大日?貴尊』は『天照大御神』である。
(45)年は長大にたけても、夫壻(背の君、夫)はなく、
男弟ありて補佐しつつ国を治めていた。
月読命の行状と考えられる薩南台地加治佐川流域の伝説
《チクラ ツキキョンドン》の伝説
(46)王となって以来、見た者があるのは少ない。もって婢千人を侍らせ、
ただ男子が一人ありて飲食を給したり、辞を伝えるのに出入りしていた。
(47)女王国から東へ海を渡ると千余里で、さらに国があり、みな倭種である。
(48)また侏儒国がその南にあり、人の身長は三~四尺で、
女王国を去ること四千余里である。また裸国・黒歯国がさらに
その東南にあり、船行一年で至ることが可能である。
(49)倭の地を参考までに問うてみれば、絶えて海中の州島の上に在り、
或いは途絶えたり或いは連なったりして、
まわりめぐれば五千余里ばかりである。
(50)汝の大夫である難升米・次使の都市牛利……
(51)大夫の伊声耆・掖邪狗……
(52)倭の女王卑弥呼は与(共・血族)の狗奴国の男王の卑弥弓呼素とは
不和であったので、
(53)倭人の載斯・烏越らを遣わして帯方郡に詣でらせ、
相攻撃する状を説明した。
(54)卑弥呼が死ぬと、大いなる冢(塚)がつくられた。
径は百余歩〔一歩は六尺とされている〕で、殉葬者は奴婢百余人であった。
(イ)『卑弥呼』の塚
(ロ)殉葬者の『奴婢』
第五章 女王台与
(55)更に男王が立ったが、国中が不服とし、さらなる誅殺が相つぎ、
ときにあたって千余人が殺された。
(イ)『天孫降臨』
《東の岳と西の岳の戦い》の伝説
(ロ)『海幸彦・山幸彦の乱』
《アタンキン》の一口噺
(56)卑弥呼の宗族(氏一族)の女である十三歳の臺與(台与)が
立てられて王と為したところ、やっと国中が定まった。
(イ)萬幡豊秋津師比売(以下、トヨアキツシ姫)
(ロ)豊玉毘売(以下、トヨタマ姫)
(ハ)南薩摩地方で語り継がれる豊玉姫伝説
《豊玉姫・玉依姫行幸》伝説
《豊玉姫神社大火》伝説
著者略歴
-
飯野布志夫(いいの ふしお)
昭和7年12月24日、鹿児島県生まれ。
広島大学教育学部高等学校教育科理科卒。
文語方言研究所主宰。
著書:
『知覧むかしむかし』
『南九州門村の「歳事しきたり』と「河童伝説」』
『南九州方言の文法』(以上 高城書房)
『言葉の起こり 飯野布志夫 著作集1』 『神々の性展 飯野布志夫 著作集2』 『覇道無惨 ヤマトタケル 飯野布志夫 著作集3』
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