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中上健次論〈第1巻〉 死者の声から、声なき死者へ
河中郁男
- 戦死者の声が支配する世界として戦後民主主義を描いた大江健三郎に対して、声なき死者と格闘することによって自己の世界を確立していった中上健次の初期作品を読み解く。〈初期作品から『枯木灘』まで〉
- 「父」と「子」の闘いという近代的主題を追求しながら、「父」の解体によってポスト・モダンを描いた作家という中上論の定説を、戦後思想史(吉本隆明─山口昌男─浅田彰)を丹念に辿ることによって解体する。
- 『中上健次論〈第2巻〉』はこちら 『中上健次論〈第3巻〉』はこちら
目次
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序 章 浅田彰を再導入する
(1)浅田彰『中上健次を再導入する』をめぐって
(2)吉本隆明の『共同幻想論』
(3)山口昌男の「中心」/「周縁」理論の周辺から
(4)山口昌男の「中心と周縁」理論
(5)倫理から認識論へ
(6)浅田彰の『構造と力』
(7)『中上健次を再導入する』を再読する
(8)浅田彰と四方田犬彦の共鳴としての「遊牧性」について
(9)『中上健次を再導入する』をもう一度読み直す
第一章 戦後という枠組み──大江健三郎と吉本隆明
(1)言説における枠組みとしての「戦後」=「近代」
(2)「死者」の声
(3)「死者」の変容
(4)武田泰淳と大岡昇平の「戦争」/「戦後」
(5)穴と出来事
(6)戦後は存在しなかった
第二章 カントあるいはハムレット/オレステス──大江健三郎とその時代
(1)カントの哲学
(2)カントから大江健三郎を読む
(3)閉塞状態と脱出
(4)ハムレット、あるいは、オレステス
(5)ハムレット、あるいは、オイディプス
第三章 不在なるものをめぐって ─大江文学との闘い
(1)初期作品をどう捉えていくのか?
(2)大江文学との闘い
(3)強迫神経症とパラノイア
(4)大江文学との決別
(5)シェリング、あるいは、ハムレット/オイディプス
第四章 「否定性」について──『灰色のコカコーラ』をめぐって
(1)「否定」について
(2)否定性について
(3)身体性の破壊
(4)見者・森の転向
(5)『灰色のコカコーラ』の解釈
第五章「兄の自殺」「父の姿」について
(1)死者の沈黙
(2)ヒステリー/出来事・反復
(3)「兄の自殺」をめぐって
(4)「できごと」と書くこと
(5)「父の姿」について
(6)「死父」と「原父」
第六章 性的なものをめぐって
(1)「秋幸」の虚構性
(2)性現象の時代
(3)吉行淳之介小論
(4)大江健三郎にとっての性
(5)「路地」の性
(6)『岬』へ
第七章 死者の支配する場所から──『岬』の構成について
(1)死者と生者の交錯する場所
(2)「死者」=「死父」の支配
(3)近親相姦の禁止について──精神分析的に
(4)近親相姦の禁止について──文化人類学的に
(5)最初の問題
(6)第二の問題
(7)単純な生活の転換
(8)近親相姦?
(9)決定不能なものから分裂したものへ
(10)何が反復されるのか?
第八章 高台と「路地」──『枯木灘』の構成について
(1)基本的な構成
(2)基本的な構成の変換
(3)付加的な要素について
(4)反省する子
(5)罪悪感を抱く子
(6)淫らな父
(7)兄弟殺し?
(8)何故反復なのか?
(7)大江の「父」から中上の「父」へ
著者略歴
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河中郁男(かわなか いくお)
1954年生まれ。
京都大学文学部卒。
鳥取県在住。
『中上健次論〈第2巻〉』(鳥影社) 『中上健次論〈第3巻〉』(鳥影社)

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