価格
3520円(税込)
ページ数
538ページ
発行日
2015年6月18日
ISBN
978-4-86265-483-0
中上健次論〈第2巻〉父の名の否、あるいは資本の到来
河中郁男
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1980年以降の日本社会の変質を「資本」による民主主義社会の破壊と把握して、その社会的変化を描いた『地の果て 至上の時』を読み解く。
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ヘーゲルの『法哲学』をマルクスの『経済学批判要綱』から転換した論考、
ヘーゲルの「アンティゴネ」解釈をラカンの解釈から転換した論考などを
手がかりに「父の名」=「声なき死者」が欠如した
ポスト・モダン的世界として『地の果て 至上の時』を分析。
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『中上健次論〈第1巻〉』はこちら
『中上健次論〈第3巻〉』はこちら
目次
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序 章 「批評」/「小説」/「近代社会」
(1)カントに抗して考えること・意味論的に
(2)カントに抗して考えること・批判的言説に対して
(3)批評が横暴であることの権利
(4)批評的=批判的言説の反撃
(5)反・批評の実践
(6)反・反=批評について
(7)批評的=批判的言説/小説的言説/近代国家
(8)カントに抗して考えることを超えて
第九章 「悲劇」について
(1)アリストテレスの「悲劇」概念をめぐって
(2)「物語の構造分析」から「悲劇」を考える
(3)「悲劇」の三つの形態
(4)ソフォクレスの『アンティゴネ』
(5)ヘーゲルの『アンティゴネ』解釈
(6)ラカンの『アンティゴネ』解釈
(7)汝享楽せよ
(8)再び、「悲劇」とは何か?
(9)「秋幸」の場合
第十章 マルクスから読むヘーゲル=中上健次
(1)労働から資本へ
(2)ヘーゲルの『法哲学』について
(3)ヘーゲルの『法哲学』における「人格性」と「所有」
(4)「市民社会」と「国家」
(5)「言葉」と「物」
(6)形而上学としての「貨幣」=「言語」論
(7)「人間」と「商品」
(8)資本とは何か?
第十一章 三人目の天皇──『万延元年のフットボール』論
(1)死者の書
(2)一族再会
(3)贖罪の羊
(4)先験的なものとしての歴史性
(5)現実界からの死者
(6)近親相姦と性倒錯
(7)三人目の天皇
(8)地主・僧侶・小作農
第十二章 「牢獄」を出た者/入った者
(1)『地の果て 至上の時』をどう読んでいくか
(2)「牢獄」について
(3)「牢獄」を出た者
(4)「路地」=「差別」とは何か
(5)変転する「龍造」=「資本」の「過程」
(6)「秋幸」という位置
第十三章 四人関係
(1)「父の名」=「大文字の他者」の消滅
(2)父と子の対面
(3)四人関係
(4)父親殺しは可能か?
(5)父の跡を継ぐ者
第十四章 「路地」の消滅・あるいは資本の到来
(1)事件としての「路地」の消滅
(2)「路地」をめぐる「龍造」対「秋幸」
(3)水の信仰=日輪教について
(4)「汚辱」の変質
(5)「龍造」の死について
(6)「秋幸」・「龍造」/「鷹四」・「蜜三郎」
(7)一九八○年・「秋幸」/その後